第67話 スティル・ライフ 池澤夏樹

文字数 527文字

科学と文学の新しい親和。芥川賞受賞作。
文系の私は理系の人が羨ましい。先を読む力が優れているのだと思う。暗記だけでは、解けない問題を、見えない要素を推測し、本質を見つけ出す。高校に入って数学が全く分からなかった。じっくり考えれば理解できたかもしれない。受験生にそんな余裕はなかった。英・国・社を暗記するだけ、数学は捨てた。それでも世の中を渡っていけた。家族を持ち会社で事務系の仕事をし、平凡に過ごすことが出来た。
主人公は宇宙の成り立ちから想像できる。太陽の光線が空間を通って地球へ到達する。海を見て、その創世記からを思い描くことが出来る。理解が難しいが、その後物語が始まる。静物=スティル・ライフ 題名の意味が分からない。主人公は、「雪の降る中を、高い岩の上に座り、海の方を見た。まわりの全部が冷たかった。体全体が冷えてきて岩の材質に近づいた。内臓だけが僅かな温かさを保っている。雪は降ってくるのではない。雪片に満たされた宇宙を、僕を乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。雪は限りない上昇の指標でしかなかった」と表現している。この部分が静物画なのだろうか。物語は株の投資の話となる。89頁をあっという間に読んでしまった。こういう短編小説もあるのだ。
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