第72話 断罪すべしプーチン エッセイ

文字数 3,854文字

 世界に大悪人は大勢いる。私が生きている間に、見聞きしたことのある大物政治家たち、身近に怨霊を感じる。彼らの全盛期には多くの国民が政策に賛同し、熱狂的に支持していた。あるいは、彼らに扇動されたというべきなのだろうか。最終的に彼らの行動に対して歴史的判断が下される。ヒットラー、東条英機、等が極悪人として断罪されている。今を時めくプーチンも近い将来、歴史的評価を受け極悪人として断罪をされるに違いない。
 現在、七〇歳で栄華を極め、仕組まれた選挙結果で、高い率で国民の支持を得て二十年もの間、ロシアのトップの座を占めている。やり方がうまいのか、自国民には飴を与え、他国民には鞭を打ち続けるのか。その陰謀術数はよく分からない。
 2014年、ウクライナは、首都キーウで内紛があり大統領が追放され、混乱状態であった。プーチンは、ウクライナ南部のクリミアに眼をつけた。反体制派である親ロシア人が多数居住し、プーチンと呼応し、ロシア軍の進軍を要請した。プーチンは海と陸から軍隊をひそかに配置させ、大きな戦闘も交えず、あっさりと、クリミアを侵略し占領してしまった。強制的に住民投票させ、ロシアへの編入手続きを行い領土とした。ウクライナはロシアに反抗する力を持っていなかった。クリミアはすべてをロシア化されていった。
 ウクライナ人から土地や財産を取り上げ、ロシア人を八十万人をも移住させた。言語も教育も政治体制、経済体制など、すべてをロシアと同じものに転換させた。ウクライナ人は、遠い先祖から受継ぐ土地を奪われてしまった。住処を追われ、ウクライナへと移っていった大勢の民が居る。旧帝政ロシアの復活を夢見るプーチンの罠にはまってしまった。
領土を拡大し己の権益を増大させていくのは、太古のむかしから、人間がいる限り続いている。殺し合い略奪し征服した者は、優雅に生活する。被害者は、泣き寝入りし、貧困な生活を強いられる。
 2022年、ロシア軍は、ウクライナ東部の国境付近で大規模な軍事演習を実施していた。欧米先進国は、「まさか軍事侵略はないだろう」と考え、その動向を静観していた。
プーチンは北京五輪の貴賓関で、中国の周近平と談笑しているのがテレビに映っていた。「わが軍はウクライナへ侵攻する。協力をお願いしたい」と打ち明け話しをしていたのだ。周近平は「賛成はしないが、両国で協議し、話し合いをしたほうがいい」と返した。狐と狸の話し合いだ。五輪が終るやいなや、ロシア軍は国境を越え、北と東から侵略を始めた。
 ウクライナは指をくわえて、ぼけーっとしていたわけではない。旧大統領の退任後、ゼレンスキーが大統領となった。勇敢で祖国愛に燃えた彼は、「ロシアの侵略に対しては、徹底抗戦。祖国の地を守り通す」、と国民に訴え、議会で承認された。八年前、ロシアからクリミアを強奪され、悔しい思いをし、秘かに確実に自国の軍備体制を強化していった。ロシアは、軍事大国であり核兵器まで保有している。ウクライナの軍備体制は小さく劣る。しかし国民は、「断固として国を守る。クリミアと同じことはさせてたまるか」と士気に燃え、男たちは前線に向かった。
国内には、旧ソ連のころから在住の大勢のロシア人がいる。同じように東ヨーロッパの国々では、ロシア人が大勢居住している。これがロシア近隣諸国の紛争原因となっている。
 攻めるロシア、守るウクライナ。戦闘は激烈を極めた。最悪の場合、原爆投下もじさないと、プーチンは脅迫する。広島の何百倍もの威力がある原爆は地球を破滅させる。世界警察の役目をしてきた米国も、軍隊をウクライナに送り込むことは、好まなかった。膨大な金と大勢の戦死者がでる。欧米諸国は「ロシアの行為は、民主主義のルールに反する」と、ロシアの蛮行を非難する。プーチンの言い分は、「ロシアの民がウクライナで、ネオナチに虐待され、我国へ助けを求めている」と理屈をつけ国民に正当性を訴え、進軍を続ける。ウクライナは力不足の軍備で、北部国境から首都キーウに向かうロシア軍に蹂躙された。地域の民間人が虐殺、強盗、強姦のやりたい放題で侵略されていった。民衆は抵抗も出来ず、無慈悲に殺され死体も放置された。ロシア軍人も悪魔と化していたのだった。
 ゼレンスキー大統領は欧米に軍事協力を求めた。諸国はロシアが違法行為を国際法上も冒していると非難し、国連決議を試みた。厚顔なロシアは、拒否権を使い、国連は非難決議すら出来なかった。戦争が始まれば国連は役にも立たない組織であることを露呈した。国連は解体し、有効な抑止力を備えた組織を構築する時期にきているのではないか。  
 欧米諸国はロシアの蛮行を阻止するため、「ウクライナの国土防衛、ロシア軍を国内から排除するための、物的協力はする」ことで一致した。弾薬、武器、戦車、ミサイル、戦闘機を与え続けた。最新兵器を与えられウクライナ軍は活気づいた。北方地域はロシア軍を排除し追い返した。その戦争跡をNATOの幹部が現場調査し、民間人の虐殺については戦争犯罪であることを確認した。プーチンの逮捕状も発効された。
 ウクライナ東部のドンパス地方を軍事制圧したロシアは、直ちに、ルハンスクとドネックを独立国として承認した。国際的に認可されなかったが、その後、プーチンは、この二国を直ちに、ロシア領土にしてしまい、国民投票の後、政治、経済、言語など全てを、ロシア化に転換する作業を徹底した。
 戦争は二年を経過し、ウクライナは善戦するがロシア軍を撤退させることが出来ないでいる。現在、米国が、ウクライナに武器を送れなくなった。アメリカファーストのトランプ大統領候補に共和党が同調し、予算を可決させない。トランプが当選すれば、米国の武器や経済援助は途絶え、ウクライナ軍ロシアに敗北するにちがいない。悪者が勝ち、弱い者が負け、苦難を受け入れなければならない。世の中に神様はいないのだろうか。 
 プーチンは、戦争犯罪人として断罪すべきではないだろうか。
 ロシアにも良識ある人々はいるだろう。しかしそれは僅かであり、大半は隙あらば他人の領土を侵犯してでも己の権益を増していくことを支持する人が多い。
 近隣の国々からは、長い歴史的事実で、ロシア人は嫌われている。しかし各国へ住み着いているロシア人は多い。その地に順応する者は良いが。転覆をはかる親ロシア派の人々を如何に対処していくかである。容赦なく、国外追放すべきなのだろうか。
 ロシア軍が、国境で軍事演習するということは、ロシアが自分たちの国を侵略すると、断定しなければならないということだろうか。自国国境付近に、同数の軍隊を対峙させ、軍事演習をさせる必要がある。しかし北欧スエーデン、ノルウエー二国は、長年にわたり中立の立場を貫いて、ナトー軍へは非加盟であった。ロシアと友好関係を結べば、大丈夫とタカをくくっていたのだ、今回のプーチンの国境侵犯で、自国の侵略もありうると判断した。自力での抗戦は不可能であり、NATOへ加盟申請し、受理された。
 賢い判断である。国境でロシアが軍事演習をすれば、NATOも同じ軍隊数で軍事演習する。今後は、その体制を続けなければならない。プーチン亡きあとも、思想を継承する者が大勢存在し続ける。ロシアはそういう狡猾な国であることを、銘記すべきであろう。
ウクライナは断固としてクリミア及びドンパスから、ロシア軍を撃退する以外に、道はないだろう。かつての日本のように「戦闘機に竹槍で闘うという精神になるまで士気を高めていく」必要があるのではないだろうか。
 そろそろ、NATOも、軍隊をウクライナに配備する作戦を決断するのではないだろうか。米軍も、クリミアへ海と陸から、ロシア軍と対峙する決断の時期がくるだろう。そうしなければ、国際社会に悪魔が横行し、不正を行なうことが当然という恐ろしい社会になってしまうのではないか。
 断固としてウクライナを強力に支援するという合意を欧米主要国は決断する時は、近付いているように感じる。モスクワを空爆すると言うことではなく、ウクライナの領土から、ロシア軍を排除するため、武器だけでなく援軍を派遣することである。
そうなれば、プーチンが核兵器を使うと脅しても、実行はしないだろう。もしウクライナへ核爆弾を投下すれば、被害は甚大であり、放射能は欧州全域を黒い灰で覆う。ロシアが欧州へ、NATOへ、宣戦布告したということになる。第三次世界大戦の始まりとなる。プーチンはもはや国民に支持されないだろう。モスクワを空爆され、ペテロスブルグをミサイル攻撃され、ロシア住民に多大なる人的物的被害が発生する。ロシア軍はウクライナだけでなく欧州の主要都市を爆撃しなければならない。その軍事力はロシアにはないだろう。第三次世界大戦が発生したならば、ロシアの惨敗で終ることになる。
 第三次世界大戦が終ったとき、歴史は、プーチンを断罪し、絞首刑の場に、引き出すだろう。
戦後、ウクライナから在住するロシア人を、ロシアへ帰国し追放することになるだろう。戦争前に、住民、財産を元通りにする義務がロシアに課されるだろう。ロシアはそれだけのことを、全国民で受忍し、賠償していかなければならない。
 長い間、ロシアはその冒した罪を償うために、悲惨な生活状態で生きて行かねばならない。百年後くらいにようやく、この戦争で亡くなったウクライナの人々が、その苦しみを忘れることができるに違いない。



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