第66話 八日目の蝉 角田光代

文字数 1,132文字

 角田光代作「大好きな町に用がある」を読んだ。エッセイというので、期待して読んだ。しかし物足りなかった。小田実の「なんでも見てやろう」また沢木耕太郎の「深夜特急」を読んだ後だったので、旅エッセイだけれど、迫力が違っていた。外国の行った場所の事実をさらりと書いている。後半で自分の思い述べている。強烈なインパクトはなかった。今、流行の先端を行く小説家なのに、片でまに書いたのだろうかと思った。角川文庫に何冊もの本が出版されている。ベストセラーとも。小説のほうは、本職だから、輝く物があるだろうと期待した。読み始めると、0章からさっと目を通すと、なにか面倒くさそうな文章である。テレビで見たことがあると妻は言い、続けて読もうとはしなかった。私もそうかと思い、八日目の蝉なんて意味分からないと脇へ置いた。数日後、再挑戦しよう現代人気作家のものだ頑張って読んで見よう。まずは最後の解説は何と書いてあるだろうか、と開いてみた。解説者は池澤夏樹、聞いたことのない作家だ。私があまり小説を読んでないということだった。解説では最初、新生児の風呂を入れてやる母親のことを書いていた。リアルな表現であり、夏樹は女の人だと思った。なつきとか女性の名前?誘拐は犯罪である。ストーリーを少し書き、この小説への思いを描く。この解説は、見事だった。今現代の女性と昭和時代の女性の、世間でのとらえ方が、大きく変化している。数十年前であれば、未婚女性が妊娠したら、妊娠を恥じて海に身を投げた。それは世間が後から突き落としたのだ。今の日本は考え方は変化している。社会人である以前に自然人であることに人は気付いた。宿っている子を産んで育てることは不可能ではない。今の日本社会では、意思があれば可能。作者はこの話しを、測ったように綿密に書いている。と池澤夏樹は解説する。男はまったく当てにされていないのだとも。解説が、私の読書欲を刺激した。
私は、この解説を読んだ後に、八日目の蝉を読んだ。作者の言わんとしている胸の内を、読み取ることが出来た。素晴らしい解説者の読み解きがあって完読出来た。
作品そのものは、過去にあった幼児誘拐事件を題材にし、小説に仕上げたものである。フィクションであり作者の思いが十分表現されている。事件の実態、裁判などは資料的であり、369頁を読むのは大変だった。100頁位削った内容にしてもらいたい気がする。最近は女性の芥川賞や直木賞を獲得する人が多い。文学は女性上位の時代になっているのだろうか。平安時代の再来かと思う。
池澤夏樹氏は七十歳過ぎの人、若い頃芥川賞を取り、数多くの作品を発表、現在芥川賞の選考委員だというすごい経歴の人である。池澤氏のスティルライフを読んで見ようと思う。
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