第65話 小倉京町文芸の先生

文字数 695文字

 後藤みな子先生にエッセイの指導をして貰って2年が経った。毎月第四土曜の十三時半から始る。現在は6人の受講生がいる。私は北九州文学協会のエッセイ公募に毎年、エッセイをかいて応募する。まだ一回も入選したことがない。生きている内に一回は入りたいと思うが実力不足でまだまだ修練の余地があるようだ。
みな子先生はプロの作家であり、若い頃、芥川賞にノミネートされた作品があるほどの実力者である。私は毎回、原稿用紙10枚に駄文を書いて、読み上げる。「こんな文章、面白くもなんともない。私でも書ける」とみな子先生は、罵倒される。小説希望の人の作品は、「これは良い作品です。あなたは才能があるから是非、応募してみなさい」と絶賛する。他の人の分も、辛口に講評する。口が悪いのが性分なのか、歯に衣着せぬ物言いなのか、と思うが、ズバリ真実を突いているようなので、ギャフンといいながらも、次の機会に挑戦し、作文をだす。
他の人は「あんなにけなされて、よく続きますね」と話しかける。「上手くなりたいから、また来るのです」と答える。2年の内、三点ほど賞められた。神社と富士山と帝国ホテル。「これは良いですね。自分のことを書くのが良いのです。古文のような歴史物は、私は理解出来ない」と仰る。アッパーカットを喰らった徒然草や神功皇后や更級日記の作文は、書いて提出しても、散々怒られる。街道を訪ねてを書いても、「見て聞いたことだけを書いても作文ではない。面白くもなんともない」、クソ・・・と思うが、みな子先生の言うことは本当のことだろう。
色々なエッセー公募に応募するが、入選しない。しかし挑み続ける。もうそれだけが楽しみである。
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