Rainy Day ・5
文字数 737文字
「あはは、社交辞令って、ビンゴでしょ?」
「ビンゴならなんです?」
「それでも、柚月ちゃんからの言葉は嬉しいからね」
「…また、何を言って…、」
「それにしても遅かったね。…はい、これ、どうぞ」
「え…?」
畳み掛けるように言った城崎さんは、私の頭上から肩先までをふわふわのバスタオルですっぽりと覆う。
(……、あったかい…)
ちょっぴり凍えそうになっていたから、この気遣いは素直に嬉しい。
「車で通勤してるのに、ここまで雨に濡れるなんて器用だね、柚月ちゃん」
「…どうして濡れてるの分かったんですか?」
「僕の勘」
タオルに手を伸ばした城崎さんは、私の濡れた髪を優しく拭いながら笑った。
「…別に、これはたまたま濡れただけなので」
「ふーん?」
「……」
タオル越しに、城崎さんの手が私の髪をたおやかに梳いてゆく。
不思議と今は、そうされることが嫌ではなかった。
「誰かに置き傘を貸したんでしょ?」
「…、別に…、」
「図星だね。僕の勘、すごいでしょ?」
「……」
「知らないよ? 風邪引いても」
「大丈夫です、生まれつき頑丈なので」
「医者の不養生って昔からよく言うけど、キミも気を付けないとね」
「言われなくても分かってます」
「これからは、傘を2本用意しておいたほうがいいね」
「……」
バスタオルが覆う中で、眉を顰めて押し黙る。
「ほんと柚月ちゃんって、気が良すぎるところがあるっていうか。自分が風邪引いて苦しむことなんて、少しも考えないんだから」
「…うるさいなあ、もう」
「うん?」
「城崎さんにそこまで言われる筋合い、ないですから」
憤りを孕んだ声音を遠慮なくぶちまける。
ただ共同生活をしているというだけで、お互いにそこまで近い距離感でいるわけでもないのに、どうでもいいことをとやかく言われることに、カチンと来てしまった。
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「ビンゴならなんです?」
「それでも、柚月ちゃんからの言葉は嬉しいからね」
「…また、何を言って…、」
「それにしても遅かったね。…はい、これ、どうぞ」
「え…?」
畳み掛けるように言った城崎さんは、私の頭上から肩先までをふわふわのバスタオルですっぽりと覆う。
(……、あったかい…)
ちょっぴり凍えそうになっていたから、この気遣いは素直に嬉しい。
「車で通勤してるのに、ここまで雨に濡れるなんて器用だね、柚月ちゃん」
「…どうして濡れてるの分かったんですか?」
「僕の勘」
タオルに手を伸ばした城崎さんは、私の濡れた髪を優しく拭いながら笑った。
「…別に、これはたまたま濡れただけなので」
「ふーん?」
「……」
タオル越しに、城崎さんの手が私の髪をたおやかに梳いてゆく。
不思議と今は、そうされることが嫌ではなかった。
「誰かに置き傘を貸したんでしょ?」
「…、別に…、」
「図星だね。僕の勘、すごいでしょ?」
「……」
「知らないよ? 風邪引いても」
「大丈夫です、生まれつき頑丈なので」
「医者の不養生って昔からよく言うけど、キミも気を付けないとね」
「言われなくても分かってます」
「これからは、傘を2本用意しておいたほうがいいね」
「……」
バスタオルが覆う中で、眉を顰めて押し黙る。
「ほんと柚月ちゃんって、気が良すぎるところがあるっていうか。自分が風邪引いて苦しむことなんて、少しも考えないんだから」
「…うるさいなあ、もう」
「うん?」
「城崎さんにそこまで言われる筋合い、ないですから」
憤りを孕んだ声音を遠慮なくぶちまける。
ただ共同生活をしているというだけで、お互いにそこまで近い距離感でいるわけでもないのに、どうでもいいことをとやかく言われることに、カチンと来てしまった。
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