きっと、朝はまた来る/キミの寝顔の傍らで 城崎side・3
文字数 1,250文字
…
突然、事務所が火事になって…。
その日、道路工事の影響で迂回したタクシーに乗っていた藤沢さんが偶然通りかかって、
燃え盛る事務所の前で、少し怪我をして呆然としていた僕を目に留めてね。
タクシーを急いで降りて、その場で応急手当をしてくれたんだ。
僕、すぐに藤沢さんだって分かったよ。
子どもの頃に見た暖かな面影も全然変わってなくて、それに、こんなに優しい人ってそういないから。
大人になった僕を知らない藤沢さんは、最初、僕だと分からないままだったんだけど、
先に気づいていた僕が訊ねたら、満面の笑顔で再会を喜んでくれた。
……キミの優しさは、藤沢さんに似たのかもしれないね。
藤沢さんのその笑顔を見たとき、猫を抱いてた男の子に見せていたキミの優しい笑顔と重なったよ。
火事で事務所も住む場所も失ったって知った藤沢さんは、『今すぐにうちにおいで』って言ってくれた。
僕、初めはとても遠慮したんだよ?
藤沢さんの押しが強くて、半ば強引だったんだからね?
けれど…、
キミのことをもっと知る機会ができるんだと思うと、内心では少し喜んでいた。
…
同じ屋根の下で暮らすようになって、ますますキミに惹かれていく僕がいた。
一緒に過ごしてみて、想像通りの子だなって思ったけど…、
意外と鈍感だったり、予想外に意地っ張りだったり…面白い発見もたくさんあるよ。
でも、最初から全く変わらないのは、キミが持つ優しさ。
僕は…、いや、僕だけじゃなく、
キミが何気なく示してくれる優しさや暖かさに、みんなたくさん救われているんだよ?
この間、久しぶりに再会した石羽くんも、きっとその中の一人。
「……」
バカだよね、柚月ちゃん。
こんなに酔っぱらって、救えなかった命を想って、自分自身を目一杯追い込んで責め立てて。
でも…、
若くしてお医者さんになったキミの苦悩を、僕は垣間見た気がした。
そもそも事故を起こした相手が頭を抱えて苦しむべきことなのだと、分かりきったことを言わなかったのは、
キミがあまりにも傷ついていて、当然のことを告げたところで今は無意味だと思ったから。
颯太から電話が来たとき、僕じゃダメなのかなって、ちょっと悲しかったよ。
だって、まっすぐ家に帰ってこなかったのは、きっと、僕がいるからでしょ?
はっきりとした理由までは分からないけど、なんとなく、今のキミは僕を咲けていると感じた。
けど、思ったんだ。
僕じゃなきゃ、キミを救い出せないって。
僕だからこそ、キミの心を楽にしてあげられるって。
好きな人を守りたいときは、自信過剰なくらいでちょうどいい…って。
「……ほんと、可愛い寝顔してる…」
「———」
ゆっくり休んで、朝になってキミが目覚めたとき、
まず最初に見せてくれる表情が笑顔だったら嬉しいな…。
泣き顔も、
怒った顔も、
ぶっきら棒な顔も、
ドヤ顔も、
穏やかな顔も…、
他にもたくさん、キミが生み出す表情はどれも全部好きだけど、
やっぱり、キミの笑顔が最高だから。
「……、好きだよ…、」
誰よりも、キミのこと…、
すごく、大好き。
volume. 9 きっと、朝はまた来る END
突然、事務所が火事になって…。
その日、道路工事の影響で迂回したタクシーに乗っていた藤沢さんが偶然通りかかって、
燃え盛る事務所の前で、少し怪我をして呆然としていた僕を目に留めてね。
タクシーを急いで降りて、その場で応急手当をしてくれたんだ。
僕、すぐに藤沢さんだって分かったよ。
子どもの頃に見た暖かな面影も全然変わってなくて、それに、こんなに優しい人ってそういないから。
大人になった僕を知らない藤沢さんは、最初、僕だと分からないままだったんだけど、
先に気づいていた僕が訊ねたら、満面の笑顔で再会を喜んでくれた。
……キミの優しさは、藤沢さんに似たのかもしれないね。
藤沢さんのその笑顔を見たとき、猫を抱いてた男の子に見せていたキミの優しい笑顔と重なったよ。
火事で事務所も住む場所も失ったって知った藤沢さんは、『今すぐにうちにおいで』って言ってくれた。
僕、初めはとても遠慮したんだよ?
藤沢さんの押しが強くて、半ば強引だったんだからね?
けれど…、
キミのことをもっと知る機会ができるんだと思うと、内心では少し喜んでいた。
…
同じ屋根の下で暮らすようになって、ますますキミに惹かれていく僕がいた。
一緒に過ごしてみて、想像通りの子だなって思ったけど…、
意外と鈍感だったり、予想外に意地っ張りだったり…面白い発見もたくさんあるよ。
でも、最初から全く変わらないのは、キミが持つ優しさ。
僕は…、いや、僕だけじゃなく、
キミが何気なく示してくれる優しさや暖かさに、みんなたくさん救われているんだよ?
この間、久しぶりに再会した石羽くんも、きっとその中の一人。
「……」
バカだよね、柚月ちゃん。
こんなに酔っぱらって、救えなかった命を想って、自分自身を目一杯追い込んで責め立てて。
でも…、
若くしてお医者さんになったキミの苦悩を、僕は垣間見た気がした。
そもそも事故を起こした相手が頭を抱えて苦しむべきことなのだと、分かりきったことを言わなかったのは、
キミがあまりにも傷ついていて、当然のことを告げたところで今は無意味だと思ったから。
颯太から電話が来たとき、僕じゃダメなのかなって、ちょっと悲しかったよ。
だって、まっすぐ家に帰ってこなかったのは、きっと、僕がいるからでしょ?
はっきりとした理由までは分からないけど、なんとなく、今のキミは僕を咲けていると感じた。
けど、思ったんだ。
僕じゃなきゃ、キミを救い出せないって。
僕だからこそ、キミの心を楽にしてあげられるって。
好きな人を守りたいときは、自信過剰なくらいでちょうどいい…って。
「……ほんと、可愛い寝顔してる…」
「———」
ゆっくり休んで、朝になってキミが目覚めたとき、
まず最初に見せてくれる表情が笑顔だったら嬉しいな…。
泣き顔も、
怒った顔も、
ぶっきら棒な顔も、
ドヤ顔も、
穏やかな顔も…、
他にもたくさん、キミが生み出す表情はどれも全部好きだけど、
やっぱり、キミの笑顔が最高だから。
「……、好きだよ…、」
誰よりも、キミのこと…、
すごく、大好き。
volume. 9 きっと、朝はまた来る END