Rainy Day ・3
文字数 676文字
「今日は、まだ仕事なんだ?」
「うん。昨日運ばれたICUの患者さんの容態が気になるし、安定するまで様子を見守ろうと思ってる。帰りはたぶん…夜中になるかな」
「そうなんだ…。少し疲れてるように見えるけど…大丈夫?」
「へーきへーき。回復した患者さんの笑顔を見るのが嬉しいから、めっちゃ頑張れるよ」
「柚月先生は、どんなときも患者さん想いだから」
「私こそ、患者さんの笑顔に支えてもらってるんだよね。教授たちから何かと睨まれる日常だから」
「……教授に、また何か言われたりしたの?」
「ううん、最近はわりと沈静化してるかな」
「それならいいんだけど…、違ったらごめんね、やっぱりなんだかいつもより元気がないように見えるから……気のせい?」
「……、」
害のない嘘ですら器用に駆使できない自分は、こういうときについ答えを言い淀んでしまって困る。
櫻の看護師としての人を見る感なのか、友人としての勘なのか。
その鋭さに、ちょっぴり焦った。
「…気のせいだよ」
不自然さを削り取る笑顔で、質問の答えをなんとか曖昧にしながらも視線は戻せずに、それ以降はしばらく無言で雨空を見上げる。
「……」
言うまでもなく、櫻の推測は大当たり。
元気がないように見えるのは、今までとは違って、城崎さんが絡んだ日常になってしまっているからだ。
櫻は何でも話せるくらいの友達だけど、家に突如現れた居候のことだけは話す気になれなくて。
とにかく、城崎さんのことを口にするのが億劫だった。
「…柚月、先生?」
「ああ、ごめん。なんでもないよ」
ぼんやりしてしまっていたことを揉み消すようにそっと笑って、髪をくしゃっと掻き上げた。
→
「うん。昨日運ばれたICUの患者さんの容態が気になるし、安定するまで様子を見守ろうと思ってる。帰りはたぶん…夜中になるかな」
「そうなんだ…。少し疲れてるように見えるけど…大丈夫?」
「へーきへーき。回復した患者さんの笑顔を見るのが嬉しいから、めっちゃ頑張れるよ」
「柚月先生は、どんなときも患者さん想いだから」
「私こそ、患者さんの笑顔に支えてもらってるんだよね。教授たちから何かと睨まれる日常だから」
「……教授に、また何か言われたりしたの?」
「ううん、最近はわりと沈静化してるかな」
「それならいいんだけど…、違ったらごめんね、やっぱりなんだかいつもより元気がないように見えるから……気のせい?」
「……、」
害のない嘘ですら器用に駆使できない自分は、こういうときについ答えを言い淀んでしまって困る。
櫻の看護師としての人を見る感なのか、友人としての勘なのか。
その鋭さに、ちょっぴり焦った。
「…気のせいだよ」
不自然さを削り取る笑顔で、質問の答えをなんとか曖昧にしながらも視線は戻せずに、それ以降はしばらく無言で雨空を見上げる。
「……」
言うまでもなく、櫻の推測は大当たり。
元気がないように見えるのは、今までとは違って、城崎さんが絡んだ日常になってしまっているからだ。
櫻は何でも話せるくらいの友達だけど、家に突如現れた居候のことだけは話す気になれなくて。
とにかく、城崎さんのことを口にするのが億劫だった。
「…柚月、先生?」
「ああ、ごめん。なんでもないよ」
ぼんやりしてしまっていたことを揉み消すようにそっと笑って、髪をくしゃっと掻き上げた。
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