Step by Step ・8
文字数 955文字
「僕、やっぱり見る目があるなあって思って」
「…え?」
「好きになってほんとによかったって、改めて思った」
「……」
「…って、さりげなく暴露しちゃったけど」
「………えっ、あ…、やっぱり…?」
「うん…、僕ね——」
「城崎さんの事務所の女性のことですか? ほら、さっき城崎さんと一緒にいた、」
記憶を手繰り寄せるようにしながら模索して。
(そこまで好きな人に出会えるなんて、ちょっと羨ましいかも…)
想いが成就することを素直に願ってしまいながら、心根で頷いた。
「分かります、綺麗な人ですもんね…、城崎さんとお似合いだと思いますよ」
「……」
「どうかしました?」
「……いや、もしかして…、柚月ちゃんって、想像以上にすごく鈍い?」
「……、鈍いとは?」
「僕の好きな人って、あの子じゃないんだけど」
「えっ、違うんですか? 私はてっきりそうだと…」
「…いいよ、うん、勘違いは誰にでもあるから…、」
気にしないで…と、続けたその言葉尻が笑声で揺れ始めている。
徐々に肩を揺らして笑い出す城崎さんのことがなんだか不愉快で、少しムッとなった。
「柚月ちゃんってとっても利発なのに、意外と…、」
「帰る」
「あっ、ちょっと待ってよ」
「嫌です」
「そうだ、さっきの続き…手を繋いで帰ろうか」
「い、いきなり何を…っ、どうしてそうなるんですかっ」
城崎さんを置き去りにして早歩きをすれば、まるでお互いが見えない糸で繋がれてるみたいに、彼も付き従うように地を蹴る。
(城崎さんの好きな人、か…)
どんな人なのだろうかと少しだけ興味が湧きつつも、そもそも自分には関係のないことだと打ち消すように首を振る。
……けど。
「ね、柚月ちゃん。せっかくだから、あの店のサンドイッチ買って帰らない? おいしいって評判なんだよね」
「…、城崎さんの奢りなら」
「いくらでも買ってあげる」
「いやあの、奢りって、冗談で言ったんですけどっ。買うなら自分で買いますっ」
「僕が買おうって言ったんだからいいの。その代わり、家に帰ったら一緒に食べよう?」
「……一緒に?」
「うん。前にオムライスを一緒に食べて以来、すれ違ってばかりだし…」
「……、」
「ね、いいでしょ?」
「…分かりました。じゃ、一緒に食べますか」
「やった!」
城崎さんとこうして過ごす時間も意外と悪くないのではないか、と。
自然にそう思い始めていた。
→
「…え?」
「好きになってほんとによかったって、改めて思った」
「……」
「…って、さりげなく暴露しちゃったけど」
「………えっ、あ…、やっぱり…?」
「うん…、僕ね——」
「城崎さんの事務所の女性のことですか? ほら、さっき城崎さんと一緒にいた、」
記憶を手繰り寄せるようにしながら模索して。
(そこまで好きな人に出会えるなんて、ちょっと羨ましいかも…)
想いが成就することを素直に願ってしまいながら、心根で頷いた。
「分かります、綺麗な人ですもんね…、城崎さんとお似合いだと思いますよ」
「……」
「どうかしました?」
「……いや、もしかして…、柚月ちゃんって、想像以上にすごく鈍い?」
「……、鈍いとは?」
「僕の好きな人って、あの子じゃないんだけど」
「えっ、違うんですか? 私はてっきりそうだと…」
「…いいよ、うん、勘違いは誰にでもあるから…、」
気にしないで…と、続けたその言葉尻が笑声で揺れ始めている。
徐々に肩を揺らして笑い出す城崎さんのことがなんだか不愉快で、少しムッとなった。
「柚月ちゃんってとっても利発なのに、意外と…、」
「帰る」
「あっ、ちょっと待ってよ」
「嫌です」
「そうだ、さっきの続き…手を繋いで帰ろうか」
「い、いきなり何を…っ、どうしてそうなるんですかっ」
城崎さんを置き去りにして早歩きをすれば、まるでお互いが見えない糸で繋がれてるみたいに、彼も付き従うように地を蹴る。
(城崎さんの好きな人、か…)
どんな人なのだろうかと少しだけ興味が湧きつつも、そもそも自分には関係のないことだと打ち消すように首を振る。
……けど。
「ね、柚月ちゃん。せっかくだから、あの店のサンドイッチ買って帰らない? おいしいって評判なんだよね」
「…、城崎さんの奢りなら」
「いくらでも買ってあげる」
「いやあの、奢りって、冗談で言ったんですけどっ。買うなら自分で買いますっ」
「僕が買おうって言ったんだからいいの。その代わり、家に帰ったら一緒に食べよう?」
「……一緒に?」
「うん。前にオムライスを一緒に食べて以来、すれ違ってばかりだし…」
「……、」
「ね、いいでしょ?」
「…分かりました。じゃ、一緒に食べますか」
「やった!」
城崎さんとこうして過ごす時間も意外と悪くないのではないか、と。
自然にそう思い始めていた。
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