初めまして…? ・5
文字数 603文字
「その様子じゃ、キスもまだかな」
「…! 失礼なこと言わないでくださいっ」
…でも。
悔しいけれど、大当たり。
痛いところを突かれて、気恥ずかしさも相まって大人げなくカッとなる。
「離してください」
「別に獲って食べようとしてるわけじゃないよ。…はい、お近づきの握手」
「……」
「そんなに怒らないでよ? せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「……」
まるで思春期の反抗みたいにいかにも煙たそうに顔を背けて、握手の手を握り返すことなく無言を押し通す。
それが、今の私にできる明確な拒絶だった。
「お出かけ、楽しんでね」
「……」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
「……」
「返事しないと、ずっとこの手、離してあげないよ?」
「っ、……行ってくる」
「あははっ、家を出るときにお父さんに言った挨拶と同じだね」
「…、」
私のこと、いつから見てたんだ…。
もはや驚く気も失せて、胸の内で項垂れた。
お父さんの知り合いなのだとしたら、こんな人、本当に珍しい。
どこで知り合ったのか…
いや、むしろ知り合いだとか思いたくないレベル。
歴代の第一印象の悪さでは、この人が一番かもしれない。
「じゃあ…、またね、柚月ちゃん」
「……失礼します」
…『また』はないけどね、もう二度と。
再会の日など永遠に来ないようにと強く懇願しながら。
手が解放された瞬間、急くように運転席に乗り込み、やっとの思いで目的地に向けてアクセルを踏み込んだ。
volume.1 初めまして…? END
「…! 失礼なこと言わないでくださいっ」
…でも。
悔しいけれど、大当たり。
痛いところを突かれて、気恥ずかしさも相まって大人げなくカッとなる。
「離してください」
「別に獲って食べようとしてるわけじゃないよ。…はい、お近づきの握手」
「……」
「そんなに怒らないでよ? せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「……」
まるで思春期の反抗みたいにいかにも煙たそうに顔を背けて、握手の手を握り返すことなく無言を押し通す。
それが、今の私にできる明確な拒絶だった。
「お出かけ、楽しんでね」
「……」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
「……」
「返事しないと、ずっとこの手、離してあげないよ?」
「っ、……行ってくる」
「あははっ、家を出るときにお父さんに言った挨拶と同じだね」
「…、」
私のこと、いつから見てたんだ…。
もはや驚く気も失せて、胸の内で項垂れた。
お父さんの知り合いなのだとしたら、こんな人、本当に珍しい。
どこで知り合ったのか…
いや、むしろ知り合いだとか思いたくないレベル。
歴代の第一印象の悪さでは、この人が一番かもしれない。
「じゃあ…、またね、柚月ちゃん」
「……失礼します」
…『また』はないけどね、もう二度と。
再会の日など永遠に来ないようにと強く懇願しながら。
手が解放された瞬間、急くように運転席に乗り込み、やっとの思いで目的地に向けてアクセルを踏み込んだ。
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