不器用な心 ・7
文字数 409文字
「自分の気持ちさえも、どうでもいいんだね」
「……私は、別に…、」
「……」
「今は、仕事のことで頭がいっぱいなので…」
「……そう」
「ごめんなさい…、もう私に構わないでください」
はぐらかしたり意地を張ったり、
自分の心を誤魔化すことなんて、今までにも多々あったはずなのに。
手を伸ばせば届く場所に愛があるにもかかわらず、裏腹な想いを晒すことがこんなにも苦しいだなんて思いもしなかった。
「今日は、舞雪に付き合ってあげてくれて、ありがとうございました」
再び差し向けた表情は、普段通りの飾らない笑顔。
その刹那、目に飛び込んできたのは、対照的に切なげに翳るき城崎さんの面差し。
けれど、何も見えないフリをして、スリッパを鳴らしながら自室まで小走りに立ち去った。
(……ほんと私、自分勝手だ…)
そう理解しながらも。
「……これでいい」
もう一度、部屋のドアを背に呟いた細い声は、冷たい虚空に溶け込んで消えた。
volume.11 不器用な心 END
「……私は、別に…、」
「……」
「今は、仕事のことで頭がいっぱいなので…」
「……そう」
「ごめんなさい…、もう私に構わないでください」
はぐらかしたり意地を張ったり、
自分の心を誤魔化すことなんて、今までにも多々あったはずなのに。
手を伸ばせば届く場所に愛があるにもかかわらず、裏腹な想いを晒すことがこんなにも苦しいだなんて思いもしなかった。
「今日は、舞雪に付き合ってあげてくれて、ありがとうございました」
再び差し向けた表情は、普段通りの飾らない笑顔。
その刹那、目に飛び込んできたのは、対照的に切なげに翳るき城崎さんの面差し。
けれど、何も見えないフリをして、スリッパを鳴らしながら自室まで小走りに立ち去った。
(……ほんと私、自分勝手だ…)
そう理解しながらも。
「……これでいい」
もう一度、部屋のドアを背に呟いた細い声は、冷たい虚空に溶け込んで消えた。
volume.11 不器用な心 END