My All ・2
文字数 1,056文字
「…でもね、」
沈黙してしまった私の隣で、舞雪は爽快感が溢れるような眼差しをスッと上に向けた。
「城崎さんからそう言われたとき、<やっぱり>って思うところがあって」
「…『やっぱり』?」
「うん。…城崎さんは、柚月のことが好きだよ」
「…っ、」
「直接聞いたわけじゃないんだけど、最初に…ほら、柚月が一緒に食事に行けなくなったあの日。城崎さんと私と二人で行ったあのときにね、城崎さん、事あるごとに柚月の話をしたの」
「私の…?」
「うん。例えば、一緒に紅茶を飲んでてもね、『柚月ちゃんは、紅茶よりもコーヒーが好きなんだよね』とか、デザートのケーキを食べてても、『柚月ちゃんは、甘いものが苦手なんだよね』とか、」
「……」
「風邪を引いたときには、同窓会を早めに切り上げてアイスを買って帰って来てくれたんだって、『柚月ちゃんは認めたがらないけど、あれは絶対に僕だけのために買って来てくれたんだよ』って、嬉しそうに話してて…、」
「…、」
「もう、城崎さんってほんとにストレートなんだもん。柚月のことが好きなんだろうなって、実はそのときに気付いちゃってたんだ」
一息の間の後、舞雪はいつもの優しい笑顔で続ける。
「…そして、柚月も」
「えっ?」
「柚月は、城崎さんのことが好きじゃないの?」
「———」
「好きだよね? 私の勘って、結構当たるんだけどな?」
「……、」
「きっと、柚月のことだから、私のために自分の気持ちを押し殺そうとしたでしょ? ダメだからね、そういうのは。そういうことされても、私は少しも嬉しくないんだからね?」
「…、うん」
自分が舞雪の立場でも同じことを言うだろう。
分かっていたのに、今まで想いを消し去ろうとしたのは、
大好きな舞雪の幸せを心から願い、何より、舞雪の心を傷つけたくなかったから。
けれど。
『自分の気持ちを他所にやって、そんなのただの自己満足じゃない』
以前、城崎さんによって放たれた言葉が脳内でリフレインする。
「…柚月?」
「…、」
ほんとにそう。
もういい加減、そこから抜け出さなければ。
「……舞雪の勘は、当たってるよ」
私がどの誰よりも素敵だと思う舞雪に対してだからこそ、彼女にだけは、ちゃんと本当の気持ちを伝えなければ。
「……好きなんだ、城崎さんのこと…。いつの間にかこんな想い…、初めてで戸惑ったりもしたけど、この気持ちは、もう誤魔化せないかな…」
「…うん! よくできましたっ!」
「…ッ、」
その答えを待ちかねていた、というような声高らかな応答が届いたかと思うと、
こちらに伸びた舞雪の左手が私の頭をわしゃわしゃと優しく撫でた。
→
沈黙してしまった私の隣で、舞雪は爽快感が溢れるような眼差しをスッと上に向けた。
「城崎さんからそう言われたとき、<やっぱり>って思うところがあって」
「…『やっぱり』?」
「うん。…城崎さんは、柚月のことが好きだよ」
「…っ、」
「直接聞いたわけじゃないんだけど、最初に…ほら、柚月が一緒に食事に行けなくなったあの日。城崎さんと私と二人で行ったあのときにね、城崎さん、事あるごとに柚月の話をしたの」
「私の…?」
「うん。例えば、一緒に紅茶を飲んでてもね、『柚月ちゃんは、紅茶よりもコーヒーが好きなんだよね』とか、デザートのケーキを食べてても、『柚月ちゃんは、甘いものが苦手なんだよね』とか、」
「……」
「風邪を引いたときには、同窓会を早めに切り上げてアイスを買って帰って来てくれたんだって、『柚月ちゃんは認めたがらないけど、あれは絶対に僕だけのために買って来てくれたんだよ』って、嬉しそうに話してて…、」
「…、」
「もう、城崎さんってほんとにストレートなんだもん。柚月のことが好きなんだろうなって、実はそのときに気付いちゃってたんだ」
一息の間の後、舞雪はいつもの優しい笑顔で続ける。
「…そして、柚月も」
「えっ?」
「柚月は、城崎さんのことが好きじゃないの?」
「———」
「好きだよね? 私の勘って、結構当たるんだけどな?」
「……、」
「きっと、柚月のことだから、私のために自分の気持ちを押し殺そうとしたでしょ? ダメだからね、そういうのは。そういうことされても、私は少しも嬉しくないんだからね?」
「…、うん」
自分が舞雪の立場でも同じことを言うだろう。
分かっていたのに、今まで想いを消し去ろうとしたのは、
大好きな舞雪の幸せを心から願い、何より、舞雪の心を傷つけたくなかったから。
けれど。
『自分の気持ちを他所にやって、そんなのただの自己満足じゃない』
以前、城崎さんによって放たれた言葉が脳内でリフレインする。
「…柚月?」
「…、」
ほんとにそう。
もういい加減、そこから抜け出さなければ。
「……舞雪の勘は、当たってるよ」
私がどの誰よりも素敵だと思う舞雪に対してだからこそ、彼女にだけは、ちゃんと本当の気持ちを伝えなければ。
「……好きなんだ、城崎さんのこと…。いつの間にかこんな想い…、初めてで戸惑ったりもしたけど、この気持ちは、もう誤魔化せないかな…」
「…うん! よくできましたっ!」
「…ッ、」
その答えを待ちかねていた、というような声高らかな応答が届いたかと思うと、
こちらに伸びた舞雪の左手が私の頭をわしゃわしゃと優しく撫でた。
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