My All ・5
文字数 765文字
「コレ見て」
「———あっ、コレって…、」
「【ゆづきのパパのつくえ。パパだいすき】」
「…、」
「柚月ちゃんが小さいときに書いたものでしょ? 覚えてる?」
「えっ…と、」
「記憶にないの?」
「…全くないです…」
「ははっ、そっか。藤沢さんも、キミがこっそり書いたであろうコレに全く気付いてなかったらしくて。でも、この落書きを見て、すごく喜んでたよ」
「そ、そうですか…。でもこの落書き、かなり恥ずかしいですね…これはちょっと——」
「ダメだよ? 消さないから」
「えっ、できれば消したいんですけどっ」
油性ペンで書いてある落書きがそう簡単に消えるわけがないのに、その位置までしゃがみ込んで指の腹で軽くこすってみる。
「ああもう、ダメだってば。こんな可愛い落書き、大切に残しておかないと」
「……か、可愛い落書き…」
「そう、とってもね。幼い柚月ちゃんのパパへの想いが込められた、可愛い落書き」
「……」
「だからこそ、この机は誰の手に渡っても駄目。藤沢さんの元に置いてあげないと」
言いながら、城崎さんは私の隣で膝を曲げて屈む。
たどたどしい文字に視線を投じた端正な横顔は、幼い頃の私の面影を辿るように頬が柔らかに隆起していて。
「キミが残した落書きでさえも、僕には大事に思えちゃう」
「…、」
なんてことない私のこんな落書きでも、この人は大切に想ってくれる。
それは、とても些細なことなのに。
どうでもいいことだと一蹴することができないのは、城崎さんの想いが素直に嬉しいから。
「あの…、城崎さん、」
熱く焦がれるような胸を静やかに整えながら、そっと声を紡いだ。
「うん? なに?」
「……あの…、色々と聞きました、舞雪から」
「えっ…?」
いきなり振られた話題に、城崎さんはわずかに目を丸くする。
静かに立ち上がった私に倣って彼も腰を上げると、かしこまった様子でこちらに向き直った。
→
「———あっ、コレって…、」
「【ゆづきのパパのつくえ。パパだいすき】」
「…、」
「柚月ちゃんが小さいときに書いたものでしょ? 覚えてる?」
「えっ…と、」
「記憶にないの?」
「…全くないです…」
「ははっ、そっか。藤沢さんも、キミがこっそり書いたであろうコレに全く気付いてなかったらしくて。でも、この落書きを見て、すごく喜んでたよ」
「そ、そうですか…。でもこの落書き、かなり恥ずかしいですね…これはちょっと——」
「ダメだよ? 消さないから」
「えっ、できれば消したいんですけどっ」
油性ペンで書いてある落書きがそう簡単に消えるわけがないのに、その位置までしゃがみ込んで指の腹で軽くこすってみる。
「ああもう、ダメだってば。こんな可愛い落書き、大切に残しておかないと」
「……か、可愛い落書き…」
「そう、とってもね。幼い柚月ちゃんのパパへの想いが込められた、可愛い落書き」
「……」
「だからこそ、この机は誰の手に渡っても駄目。藤沢さんの元に置いてあげないと」
言いながら、城崎さんは私の隣で膝を曲げて屈む。
たどたどしい文字に視線を投じた端正な横顔は、幼い頃の私の面影を辿るように頬が柔らかに隆起していて。
「キミが残した落書きでさえも、僕には大事に思えちゃう」
「…、」
なんてことない私のこんな落書きでも、この人は大切に想ってくれる。
それは、とても些細なことなのに。
どうでもいいことだと一蹴することができないのは、城崎さんの想いが素直に嬉しいから。
「あの…、城崎さん、」
熱く焦がれるような胸を静やかに整えながら、そっと声を紡いだ。
「うん? なに?」
「……あの…、色々と聞きました、舞雪から」
「えっ…?」
いきなり振られた話題に、城崎さんはわずかに目を丸くする。
静かに立ち上がった私に倣って彼も腰を上げると、かしこまった様子でこちらに向き直った。
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