不器用な心 ・1
文字数 1,137文字
小学校の同窓会は、しばらく疎遠になっていた友情を再燃させる。
彼女、舞雪 との絆もその一つだ。
名前の通り、白くふわりと舞う牡丹雪のように清純で儚いというか、学校の初等部で出会った頃から体が弱くおとなしい少女だった。
生まれつき脆弱なせいで学校を休みがちな舞雪が、クラス内で孤立してしまわないかと危惧した私は、
彼女が学校に来た際には、必ず一緒に遊ぼうと声を掛けた。
舞雪も私のことをとても慕ってくれて、当時『一番の友達は?』と答える場面では、即座に互いの名前を連ねるほどの親友になった。
男勝りでおてんばだった私とは対照的な舞雪が、自分にはない魅力を全て兼ね備えている気がして、そんな彼女に素直に憧れていた。
その想いは、今でもずっと変わらない。
体の弱い舞雪が、この間行われた同窓会に出席できるか心配だったが、互いの元気な姿を目にして再会を心から喜び合った。
その同窓会からしばらく経ったある日、舞雪が私の家に遊びに訪れた。
リビングで紅茶を飲んでいると、たまたまそこに城崎さんが現れて、
『…どうも』
『こ、こんにちは…、』
舞雪と城崎さんは、ごく普通に挨拶を交わしただけだった。
けれど。
舞雪はその一瞬で、城崎さんに心を奪われてしまったらしい。
いわゆる、一目惚れだった。
普段は人見知りで恥ずかしがり屋な彼女が、瞳を輝かせながら城崎さんについて訊ねてくる。
『…悪い人じゃないよ、むしろいい人かな』
『わあ、そうなんだ』
『あ、時々イジワルかも』
『ふふ、そうなの?』
『ちょっと可愛いところがあるかな…。万人受けするイケメンなのも認める』
『うん、素敵だよね』
思いついた城崎さんの印象を並べれば、舞雪は嬉しそうに微笑みながら相槌を打っていた。
以来、舞雪は、ちょくちょくうちに顔を出すようになった。
城崎さんが家にいるときには、さりげなく会話できるように促してやる。
舞雪の楽しげな笑顔が純粋に嬉しかった。
そんな日が何度か続いたある日。
舞雪からとても遠慮がちに、城崎さんと一緒に食事に出かけたいが、誘う勇気がない…と切り出された。
早速、城崎さんに食事の話を持ち掛けると、分かりやすく顔を曇らせて駄々っ子のように私を軽く睨んだ。
『…嫌。行きたくない』
キッパリと放たれた否定文は、城崎さんらしい正直な答え方だと思う。
だけど、このままだと舞雪の願いを叶えてあげられない。
なんとか懇願してみると、城崎さんは渋々ながらも条件付きで了承してくれた。
『食事に行く日は、柚月ちゃんも一緒に行くこと。三人じゃなきゃ、行かないから』
『……分かりました』
そう返事をしたけれど、それを守る気はなかった。
……もしも。
親友と呼べる大切な友達と自分が同じ人を好きになったら、私ならどうするのだろう。
「……」
その答えは、もう見えている気がした。
→
彼女、
名前の通り、白くふわりと舞う牡丹雪のように清純で儚いというか、学校の初等部で出会った頃から体が弱くおとなしい少女だった。
生まれつき脆弱なせいで学校を休みがちな舞雪が、クラス内で孤立してしまわないかと危惧した私は、
彼女が学校に来た際には、必ず一緒に遊ぼうと声を掛けた。
舞雪も私のことをとても慕ってくれて、当時『一番の友達は?』と答える場面では、即座に互いの名前を連ねるほどの親友になった。
男勝りでおてんばだった私とは対照的な舞雪が、自分にはない魅力を全て兼ね備えている気がして、そんな彼女に素直に憧れていた。
その想いは、今でもずっと変わらない。
体の弱い舞雪が、この間行われた同窓会に出席できるか心配だったが、互いの元気な姿を目にして再会を心から喜び合った。
その同窓会からしばらく経ったある日、舞雪が私の家に遊びに訪れた。
リビングで紅茶を飲んでいると、たまたまそこに城崎さんが現れて、
『…どうも』
『こ、こんにちは…、』
舞雪と城崎さんは、ごく普通に挨拶を交わしただけだった。
けれど。
舞雪はその一瞬で、城崎さんに心を奪われてしまったらしい。
いわゆる、一目惚れだった。
普段は人見知りで恥ずかしがり屋な彼女が、瞳を輝かせながら城崎さんについて訊ねてくる。
『…悪い人じゃないよ、むしろいい人かな』
『わあ、そうなんだ』
『あ、時々イジワルかも』
『ふふ、そうなの?』
『ちょっと可愛いところがあるかな…。万人受けするイケメンなのも認める』
『うん、素敵だよね』
思いついた城崎さんの印象を並べれば、舞雪は嬉しそうに微笑みながら相槌を打っていた。
以来、舞雪は、ちょくちょくうちに顔を出すようになった。
城崎さんが家にいるときには、さりげなく会話できるように促してやる。
舞雪の楽しげな笑顔が純粋に嬉しかった。
そんな日が何度か続いたある日。
舞雪からとても遠慮がちに、城崎さんと一緒に食事に出かけたいが、誘う勇気がない…と切り出された。
早速、城崎さんに食事の話を持ち掛けると、分かりやすく顔を曇らせて駄々っ子のように私を軽く睨んだ。
『…嫌。行きたくない』
キッパリと放たれた否定文は、城崎さんらしい正直な答え方だと思う。
だけど、このままだと舞雪の願いを叶えてあげられない。
なんとか懇願してみると、城崎さんは渋々ながらも条件付きで了承してくれた。
『食事に行く日は、柚月ちゃんも一緒に行くこと。三人じゃなきゃ、行かないから』
『……分かりました』
そう返事をしたけれど、それを守る気はなかった。
……もしも。
親友と呼べる大切な友達と自分が同じ人を好きになったら、私ならどうするのだろう。
「……」
その答えは、もう見えている気がした。
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