My All ・7
文字数 1,322文字
「あの…、やっぱり、寂しいですか…?」
「なに言ってるの、そんなの愚問だよ」
「…、」
「……ごめん。ちゃんと分かってるんだよ? 柚月ちゃんが真剣に考えて決めたことだろうって…。だって僕、仕事を頑張ってる柚月ちゃんのことも大好きだから。でも今は、ちょっといきなりで…。素直な気持ちで、<頑張っておいで>って言えない…」
「……」
こんなにも深く落ち込む城崎さんを目の当たりにするとは思ってもみなくて、内心で狼狽えてしまう。
気持ちの整理云々を考えて、もっと早くに渡米することを伝えれば良かった…とか。
いっそのこと、アメリカ行きを辞めれば良かったんじゃないだろうか? …とか。
「……」
でも、やっぱりそういうことではなくて。
私が今、想いを言葉にして彼に最も告げなければならないことはただ一つ。
「私…、」
「……」
「私も、その…、なんていうか……、寂しいんですよね…」
「えっ…?」
「長い間、会えなくなるのは嫌だなって…」
「それって、僕と会えなくなるのが嫌だってこと…?」
「…そうです」
「え、ちょっと待って、柚月ちゃん、もう少し詳しく話してくれる?」
縋り付くような城崎さんの声は、わずかな躍動を含みながらも少しばかり掠れていて。
向けられた疑問符を丁寧に受け取り、激しく打つ鼓動を抑え込むようにした私は、下方で組んでいた両手に軽く力を込める。
「……つ、繋がっていたいんです、これからもずっと、城崎さんと…」
「———」
「やっぱり、どう考えても…このまま<さよなら>っていうのは嫌なんです」
「柚月ちゃん…」
「私は、城崎さんのことが…———」
<…好きです…!>
「……っ、」
「…柚月ちゃん?」
「…、」
声高らかに、一世一代ともいえる告白を遂げたつもりだったのに。
(こ、声が出ないっ…)
きちんと伝えなければと思えば思うほど緊張が高まって、声を形にすることができずに心が縮こまる。
正確には、たったの2文字。
<好き>と告げるだけでいい。
「……、」
ただそれだけのことなのに、心音は爆発的に加速して、たまらずに俯いてしまった。
(な、情けない…)
「…、」
「……」
ほんのわずかな静寂の後、
「…柚月ちゃんにしては、生まれ変わりを果たすみたいに進歩したよね」
そんな私を包み込むような城崎さんの声が上から降り注ぐ。
「…し、しましたよねっ?」
「うん、すごい進歩だよ。…なんて、僕も余裕じみた調子で言ってるけど、緊張してるのはキミだけじゃないよ」
「…え、」
「すごくドキドキしてるから」
言いながら静かに私の手を取った城崎さんに誘導されて、彼の左胸に手を押し当てる。
「…ね、すごいでしょ?」
「…は、はい…、」
「心臓が壊れちゃいそう」
「壊れたら困ります」
「…ふふ」
小さく笑った城崎さんは、反対側の手で私の頬に触れる。
「キミの初恋を、僕がもらってもいいの…?」
「も、もちろんです」
「代わりに、僕のありったけの愛をキミにあげるけど…、一生返品不可だよ?」
「ど、どんとこいですっ…!」
「あははっ、……もう、ほんとにしてやられた。なんなの、こんな不意打ち」
ちょっぴりむくれながらも喜びに満ちたように。
「大好きだよ、柚月ちゃん」
城崎さんは柔らかに私を引き寄せると背中に手を回し、大切そうに優しく深く抱き締めた。
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「なに言ってるの、そんなの愚問だよ」
「…、」
「……ごめん。ちゃんと分かってるんだよ? 柚月ちゃんが真剣に考えて決めたことだろうって…。だって僕、仕事を頑張ってる柚月ちゃんのことも大好きだから。でも今は、ちょっといきなりで…。素直な気持ちで、<頑張っておいで>って言えない…」
「……」
こんなにも深く落ち込む城崎さんを目の当たりにするとは思ってもみなくて、内心で狼狽えてしまう。
気持ちの整理云々を考えて、もっと早くに渡米することを伝えれば良かった…とか。
いっそのこと、アメリカ行きを辞めれば良かったんじゃないだろうか? …とか。
「……」
でも、やっぱりそういうことではなくて。
私が今、想いを言葉にして彼に最も告げなければならないことはただ一つ。
「私…、」
「……」
「私も、その…、なんていうか……、寂しいんですよね…」
「えっ…?」
「長い間、会えなくなるのは嫌だなって…」
「それって、僕と会えなくなるのが嫌だってこと…?」
「…そうです」
「え、ちょっと待って、柚月ちゃん、もう少し詳しく話してくれる?」
縋り付くような城崎さんの声は、わずかな躍動を含みながらも少しばかり掠れていて。
向けられた疑問符を丁寧に受け取り、激しく打つ鼓動を抑え込むようにした私は、下方で組んでいた両手に軽く力を込める。
「……つ、繋がっていたいんです、これからもずっと、城崎さんと…」
「———」
「やっぱり、どう考えても…このまま<さよなら>っていうのは嫌なんです」
「柚月ちゃん…」
「私は、城崎さんのことが…———」
<…好きです…!>
「……っ、」
「…柚月ちゃん?」
「…、」
声高らかに、一世一代ともいえる告白を遂げたつもりだったのに。
(こ、声が出ないっ…)
きちんと伝えなければと思えば思うほど緊張が高まって、声を形にすることができずに心が縮こまる。
正確には、たったの2文字。
<好き>と告げるだけでいい。
「……、」
ただそれだけのことなのに、心音は爆発的に加速して、たまらずに俯いてしまった。
(な、情けない…)
「…、」
「……」
ほんのわずかな静寂の後、
「…柚月ちゃんにしては、生まれ変わりを果たすみたいに進歩したよね」
そんな私を包み込むような城崎さんの声が上から降り注ぐ。
「…し、しましたよねっ?」
「うん、すごい進歩だよ。…なんて、僕も余裕じみた調子で言ってるけど、緊張してるのはキミだけじゃないよ」
「…え、」
「すごくドキドキしてるから」
言いながら静かに私の手を取った城崎さんに誘導されて、彼の左胸に手を押し当てる。
「…ね、すごいでしょ?」
「…は、はい…、」
「心臓が壊れちゃいそう」
「壊れたら困ります」
「…ふふ」
小さく笑った城崎さんは、反対側の手で私の頬に触れる。
「キミの初恋を、僕がもらってもいいの…?」
「も、もちろんです」
「代わりに、僕のありったけの愛をキミにあげるけど…、一生返品不可だよ?」
「ど、どんとこいですっ…!」
「あははっ、……もう、ほんとにしてやられた。なんなの、こんな不意打ち」
ちょっぴりむくれながらも喜びに満ちたように。
「大好きだよ、柚月ちゃん」
城崎さんは柔らかに私を引き寄せると背中に手を回し、大切そうに優しく深く抱き締めた。
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