ピリオド. ・1
文字数 563文字
今日は、城崎さんの新しい事務所にお邪魔する日。
私が日本で過ごすことができるのもあとわずかになり、ここ数日の間で身の回りの必需品などはスーツケースに詰め込んだ。
アメリカで私が暮らす予定のアパートはワンルームだが日本のそれよりもずっと広く、しかも居抜きであるために家具など運搬の必要がなく、
まるで、ぶらりと一人旅にでも出るような身軽さでボルチモアへと向かう。
城崎さんはまだ私が渡米することを知らない。
両親にも、湿っぽくなるのが嫌だからという理由を見繕って、彼には知らせないままでいて欲しいと頼んである。
城崎さんには何も言わずに日本を離れたほうが、気持ちも楽だったりするから。
結局、舞雪の気持ちを考えると、やっぱりどうしても自分のためのハッピーエンドを引き寄せる気にはまだなれなくて。
「……」
愛が欲しい自分と、その愛を諦めようとする自分。
いい加減どっちを選ぶのかと、二人の自分からの挟撃に強い焦燥感を覚える。
でも。
「……はぁ…、もう、考えるのやめよう…」
どうせ、もうすぐアメリカに発つ。
向こうに行きさえすれば、気持ちの切り替えにもたつく自分を目の当たりにすることも、次第になくなっていくはず。
(…仕事に専念するし、きっと大丈夫)
目を背けてはいけない事柄だと知りながらも、まるで逃れるように、渡米までの日々を指折り数える自分がいた。
→
私が日本で過ごすことができるのもあとわずかになり、ここ数日の間で身の回りの必需品などはスーツケースに詰め込んだ。
アメリカで私が暮らす予定のアパートはワンルームだが日本のそれよりもずっと広く、しかも居抜きであるために家具など運搬の必要がなく、
まるで、ぶらりと一人旅にでも出るような身軽さでボルチモアへと向かう。
城崎さんはまだ私が渡米することを知らない。
両親にも、湿っぽくなるのが嫌だからという理由を見繕って、彼には知らせないままでいて欲しいと頼んである。
城崎さんには何も言わずに日本を離れたほうが、気持ちも楽だったりするから。
結局、舞雪の気持ちを考えると、やっぱりどうしても自分のためのハッピーエンドを引き寄せる気にはまだなれなくて。
「……」
愛が欲しい自分と、その愛を諦めようとする自分。
いい加減どっちを選ぶのかと、二人の自分からの挟撃に強い焦燥感を覚える。
でも。
「……はぁ…、もう、考えるのやめよう…」
どうせ、もうすぐアメリカに発つ。
向こうに行きさえすれば、気持ちの切り替えにもたつく自分を目の当たりにすることも、次第になくなっていくはず。
(…仕事に専念するし、きっと大丈夫)
目を背けてはいけない事柄だと知りながらも、まるで逃れるように、渡米までの日々を指折り数える自分がいた。
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