ピリオド. ・1

文字数 563文字

今日は、城崎さんの新しい事務所にお邪魔する日。
私が日本で過ごすことができるのもあとわずかになり、ここ数日の間で身の回りの必需品などはスーツケースに詰め込んだ。

アメリカで私が暮らす予定のアパートはワンルームだが日本のそれよりもずっと広く、しかも居抜きであるために家具など運搬の必要がなく、
まるで、ぶらりと一人旅にでも出るような身軽さでボルチモアへと向かう。

城崎さんはまだ私が渡米することを知らない。
両親にも、湿っぽくなるのが嫌だからという理由を見繕って、彼には知らせないままでいて欲しいと頼んである。

城崎さんには何も言わずに日本を離れたほうが、気持ちも楽だったりするから。

結局、舞雪の気持ちを考えると、やっぱりどうしても自分のためのハッピーエンドを引き寄せる気にはまだなれなくて。

「……」

愛が欲しい自分と、その愛を諦めようとする自分。

いい加減どっちを選ぶのかと、二人の自分からの挟撃に強い焦燥感を覚える。

でも。

「……はぁ…、もう、考えるのやめよう…」

どうせ、もうすぐアメリカに発つ。

向こうに行きさえすれば、気持ちの切り替えにもたつく自分を目の当たりにすることも、次第になくなっていくはず。

(…仕事に専念するし、きっと大丈夫)

目を背けてはいけない事柄だと知りながらも、まるで逃れるように、渡米までの日々を指折り数える自分がいた。




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登場人物紹介

藤沢柚月(フジサワ ユヅキ)23歳

主人公

特異な経歴ゆえに若くして医師


H162cm

城崎咲也(キザキ サクヤ)26歳

私立探偵事務所の所長


H179cm

真鍋颯太(マナベ ソウタ)23歳
柚月の幼馴染


H170cm

石羽 響也(イシバ キョウヤ)27歳

柚月の友人


H175cm


久動 琉成(クドウ リュウセイ)28歳

柚月が勤める大学病院の先輩医師


H176cm

倉橋 舞雪(クラハシ マユキ)23歳

柚月の親友


H156cm

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