My All ・6
文字数 753文字
「この間、舞雪が病院まで会いに来てくれて…そのときに聞いたんです、城崎さんが舞雪との関わりを絶っていたこと…」
「———そうなんだ…。ごめんね柚月ちゃん、僕はどうしても、」
「大丈夫です、怒ってるわけじゃないですから」
「…、」
「舞雪と久しぶりに話をして、やっぱりいい子だなって思いました」
「…うん。柚月ちゃんの友達だもん、いい子に決まってるよ」
「あの子を振ったこと、いずれ後悔するかもしれませんよ?」
「しないよ。舞雪ちゃんがいい子なのは認めるけど、僕にとっての好きな子じゃないから」
謙虚な微笑をその目元に湛えながらも確固たる意志を貫くような眼差しに切り替えて、城崎さんは私を見つめる。
「…、」
その相好に思わず表情を引き締めて、高鳴り始める鼓動を鎮めつつ真っ直ぐに視軸を合わせた。
「……城崎さんに、伝えたいことがあります」
「僕に?」
「……はい」
「手どうしたの?」
「実は、私……、」
「……」
「次の非番に、仕事の都合で渡米するんです」
「えっ…?」
「2年から3年の間、向こうの大学で研究チームの一員として職務に就くことになったので、しばらく、日本からいなくなります」
「———」
「……」
いきなりの告知に驚きを隠せないでいる眼前の形姿を一瞥してから、視線を下方に言葉を紡ぐ。
「当たり前ですけど…、城崎さんとも、今までのように気楽に会うことなんてできなくなるわけで…」
「……そう、だよね…。日本にいないんだもん、偶然の再会すら皆無だよ…」
普段は勘の鋭い城崎さんも、きっと今回ばかりは範疇になかった出来事。
その表情は瞬く間に悲愴に満ちて、言葉尻もゆるゆると力をなくしていく。
私の医療分野に対する向上心を妨げないようにと誠実な態度を示そうとしてくれながらも、見ているこっちが辛くなるほど、城崎さんの双眸は寂し気に翳りを深めた。
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「———そうなんだ…。ごめんね柚月ちゃん、僕はどうしても、」
「大丈夫です、怒ってるわけじゃないですから」
「…、」
「舞雪と久しぶりに話をして、やっぱりいい子だなって思いました」
「…うん。柚月ちゃんの友達だもん、いい子に決まってるよ」
「あの子を振ったこと、いずれ後悔するかもしれませんよ?」
「しないよ。舞雪ちゃんがいい子なのは認めるけど、僕にとっての好きな子じゃないから」
謙虚な微笑をその目元に湛えながらも確固たる意志を貫くような眼差しに切り替えて、城崎さんは私を見つめる。
「…、」
その相好に思わず表情を引き締めて、高鳴り始める鼓動を鎮めつつ真っ直ぐに視軸を合わせた。
「……城崎さんに、伝えたいことがあります」
「僕に?」
「……はい」
「手どうしたの?」
「実は、私……、」
「……」
「次の非番に、仕事の都合で渡米するんです」
「えっ…?」
「2年から3年の間、向こうの大学で研究チームの一員として職務に就くことになったので、しばらく、日本からいなくなります」
「———」
「……」
いきなりの告知に驚きを隠せないでいる眼前の形姿を一瞥してから、視線を下方に言葉を紡ぐ。
「当たり前ですけど…、城崎さんとも、今までのように気楽に会うことなんてできなくなるわけで…」
「……そう、だよね…。日本にいないんだもん、偶然の再会すら皆無だよ…」
普段は勘の鋭い城崎さんも、きっと今回ばかりは範疇になかった出来事。
その表情は瞬く間に悲愴に満ちて、言葉尻もゆるゆると力をなくしていく。
私の医療分野に対する向上心を妨げないようにと誠実な態度を示そうとしてくれながらも、見ているこっちが辛くなるほど、城崎さんの双眸は寂し気に翳りを深めた。
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