苛立ちのメカニズム ・3
文字数 708文字
「ほんとは、<嫌だ>って、声を大にして言いたいはずなのに」
「えっ…?」
突然振られた言葉に、思わず目を丸くする。
「柚月ちゃん、僕との同居生活を嫌だって思った自分を責めたでしょ?」
「べ、別に…」
「ううん、自分のことを諫めたでしょ?」
「そんなことは…、思い過ごし、です」
たどたどしい否定に、城崎さんはお見通しといったようにクスクスと笑った。
「すぐに出て行かなくていいって言ってくれたのは、どう考えても、キミの優しさだから」
「それ、まだ言いますか」
「うん。…ちなみにもう一つ付け加えると、思ってることが顔に出やすいから、柚月ちゃんは嘘が付けない子だね」
「——」
ほんと直さなきゃ、すぐに顔に出ること…。
自分の未熟さに改めて打ちのめされるようで、城崎さんの視界から逃れるようにしてそっぽを向いた。
「それにしても、まさか颯太が柚月ちゃんの恋人だったとはね」
「…いきなり何を言ってるんですか」
場の空気を変えようと試みたのかもしれないけど、またこの人は突拍子もない発言をする。
「恋人じゃないです。颯太は、ただの幼馴染なので」
「…違うんだ?」
「はい、違います。…観察力とか鋭いのに、見抜けませんでした?」
少しばかり勝ち誇った気持ちになる自分の稚拙さに笑えてしまいながらも、なんとなく気分がいい。
「そうだね。ちょっとだけ、勘が鈍ってしまっててかも…。恋人じゃないんだね」
「幼馴染です」
「柚月ってば、めっちゃ否定するじゃん!」
突然の横やり。
私の毅然とした対応を見て、どこか満足げに口端を持ち上げた城崎さんとは対照的にありありと不安を滲ませたのは、
「もうちょっとなんかさあ…、言い方あるっつうか」
隣でオレンジジュースを飲み終えた颯太だった。
→
「えっ…?」
突然振られた言葉に、思わず目を丸くする。
「柚月ちゃん、僕との同居生活を嫌だって思った自分を責めたでしょ?」
「べ、別に…」
「ううん、自分のことを諫めたでしょ?」
「そんなことは…、思い過ごし、です」
たどたどしい否定に、城崎さんはお見通しといったようにクスクスと笑った。
「すぐに出て行かなくていいって言ってくれたのは、どう考えても、キミの優しさだから」
「それ、まだ言いますか」
「うん。…ちなみにもう一つ付け加えると、思ってることが顔に出やすいから、柚月ちゃんは嘘が付けない子だね」
「——」
ほんと直さなきゃ、すぐに顔に出ること…。
自分の未熟さに改めて打ちのめされるようで、城崎さんの視界から逃れるようにしてそっぽを向いた。
「それにしても、まさか颯太が柚月ちゃんの恋人だったとはね」
「…いきなり何を言ってるんですか」
場の空気を変えようと試みたのかもしれないけど、またこの人は突拍子もない発言をする。
「恋人じゃないです。颯太は、ただの幼馴染なので」
「…違うんだ?」
「はい、違います。…観察力とか鋭いのに、見抜けませんでした?」
少しばかり勝ち誇った気持ちになる自分の稚拙さに笑えてしまいながらも、なんとなく気分がいい。
「そうだね。ちょっとだけ、勘が鈍ってしまっててかも…。恋人じゃないんだね」
「幼馴染です」
「柚月ってば、めっちゃ否定するじゃん!」
突然の横やり。
私の毅然とした対応を見て、どこか満足げに口端を持ち上げた城崎さんとは対照的にありありと不安を滲ませたのは、
「もうちょっとなんかさあ…、言い方あるっつうか」
隣でオレンジジュースを飲み終えた颯太だった。
→