赤い糸 ・10
文字数 1,061文字
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発表会も無事に終わり、帰り支度を済ませたゆなちゃん母娘と合流できた私たちは、持って来ていたお菓子のプレゼントを早速手渡した。
子ウサギのようにぴょんぴょんと飛び跳ねてとても喜んでくれたゆなちゃんは、
『これも好き、これも好き』と、ラッピングの外側からお菓子を覗き込んでは嬉しそうにはしゃいでくれた。
「…ねえ、柚月先生。プレゼントの中身、もう見た?」
「ううん、それは家に帰ってからにしようかなって思ってたんだけど…」
「プレゼントは、お兄ちゃんの分も入ってるから、早く見て欲しいなー」
「…じゃあ、ここで見てもいい?」
「うん!」
「じゃあ、開けさせてもらうね…、」
ちょっぴり身が引き締まるような思いで、ガラス細工を扱うようにプレゼントの小箱をそっと開けると、
丸い細かなビーズの小さなリングが二つ仲良く並んでいた。
ガーネットを思わせる赤で作られたそれらは、ひっそりと輝きながらも美しい煌めきを纏いながら存在感を放っている。
「わあ…、これ、ゆなちゃんが作ったんだよね?」
「うん! ママに教えてもらいながら作ったんだよ」
「すごいね、とても上手に出来てる…!」
「それ、ピンキーリングなんだ」
「ピンキーリング…、なるほど、だからちょっと小さめなんだね」
納得しきりに大きく頷くと、その様を見たゆなちゃんが満足げにニッと口角を上げた。
「お兄ちゃんと一緒に付けてみて!」
「えっ」
「一緒に付けてるところ、見たい!」
「…、」
(せっかくのプレゼントだし…)
横に並んで立つ城崎さんの様子を窺うように視線を送れば、かち合った端正な眼差しが柔らかな三日月を描いて、了承したように頷いた。
偽装の恋人だけど、今はそのことが霧の奥に隠れたみたいに形 を潜めて、
戸惑うことなく小箱から静かにリングを取り出して、小指にはめてみる。
「…、」
「やったあ、ぴったりだー!」
「柚月ちゃん、良く似合ってる」
「ありがとうございます…、城崎さんも、せっかくですから…どうぞ」
「うん、早速付けてみようかな…、」
私から小箱を受け取った城崎さんはリングを丁寧に指先で摘まむと、同じように小指にはめて、ゆなちゃんを見下ろした。
「わ…、僕のリングもサイズがぴったりだね」
「お兄ちゃんの分はパパの小指に合わせて、柚月先生の分は、ママの小指に合わせて作ったんだ」
「へえ、そうなんだ。僕にまでこんな可愛いプレゼント、ありがとうね、ゆなちゃん」
「うん!」
ツインテールの髪を揺らして元気に応えた後、小指のリングを嬉しそうに眺める城崎さんをしばらく見つめていたゆなちゃんは、私に視線を移して二の句を続けた。
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発表会も無事に終わり、帰り支度を済ませたゆなちゃん母娘と合流できた私たちは、持って来ていたお菓子のプレゼントを早速手渡した。
子ウサギのようにぴょんぴょんと飛び跳ねてとても喜んでくれたゆなちゃんは、
『これも好き、これも好き』と、ラッピングの外側からお菓子を覗き込んでは嬉しそうにはしゃいでくれた。
「…ねえ、柚月先生。プレゼントの中身、もう見た?」
「ううん、それは家に帰ってからにしようかなって思ってたんだけど…」
「プレゼントは、お兄ちゃんの分も入ってるから、早く見て欲しいなー」
「…じゃあ、ここで見てもいい?」
「うん!」
「じゃあ、開けさせてもらうね…、」
ちょっぴり身が引き締まるような思いで、ガラス細工を扱うようにプレゼントの小箱をそっと開けると、
丸い細かなビーズの小さなリングが二つ仲良く並んでいた。
ガーネットを思わせる赤で作られたそれらは、ひっそりと輝きながらも美しい煌めきを纏いながら存在感を放っている。
「わあ…、これ、ゆなちゃんが作ったんだよね?」
「うん! ママに教えてもらいながら作ったんだよ」
「すごいね、とても上手に出来てる…!」
「それ、ピンキーリングなんだ」
「ピンキーリング…、なるほど、だからちょっと小さめなんだね」
納得しきりに大きく頷くと、その様を見たゆなちゃんが満足げにニッと口角を上げた。
「お兄ちゃんと一緒に付けてみて!」
「えっ」
「一緒に付けてるところ、見たい!」
「…、」
(せっかくのプレゼントだし…)
横に並んで立つ城崎さんの様子を窺うように視線を送れば、かち合った端正な眼差しが柔らかな三日月を描いて、了承したように頷いた。
偽装の恋人だけど、今はそのことが霧の奥に隠れたみたいに
戸惑うことなく小箱から静かにリングを取り出して、小指にはめてみる。
「…、」
「やったあ、ぴったりだー!」
「柚月ちゃん、良く似合ってる」
「ありがとうございます…、城崎さんも、せっかくですから…どうぞ」
「うん、早速付けてみようかな…、」
私から小箱を受け取った城崎さんはリングを丁寧に指先で摘まむと、同じように小指にはめて、ゆなちゃんを見下ろした。
「わ…、僕のリングもサイズがぴったりだね」
「お兄ちゃんの分はパパの小指に合わせて、柚月先生の分は、ママの小指に合わせて作ったんだ」
「へえ、そうなんだ。僕にまでこんな可愛いプレゼント、ありがとうね、ゆなちゃん」
「うん!」
ツインテールの髪を揺らして元気に応えた後、小指のリングを嬉しそうに眺める城崎さんをしばらく見つめていたゆなちゃんは、私に視線を移して二の句を続けた。
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