苛立ちのメカニズム ・5
文字数 659文字
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少し続いた沈黙の後。
「…ちょっと、コーヒー飲みに行ってくる」
おもむろに立ち上がって、キッチンカウンターに置いたままの愛車の鍵を手にする。
(今日は、本当にいろんなことがあった日だったから…)
なんとなく、一人になりたい気持ちになった。
それは、疲れたときに多く見られる私のルーティン。
「コーヒー? そんなのここで飲めばいいじゃん」
「なんかちょっと、カフェで味わいたい気分なんだよね」
「それじゃ、俺も付き合うよ」
言うが早くその場から立ち上がった颯太は、ジャケットを手に取りソファーから離れた。
(…マズイな…、こういったときの颯太は、言うことを聞いてくれない確率が高い)
鼻歌混じりにジャケットの袖に腕を通す颯太を見つめながら、断る理由を巡らせる。
「…あのさ。ちょっと、本も読むかも…だしさ」
「本?」
「うん。」
「じゃ、俺もマンガ読もっかなー」
「いやあの、無理に付き合ってくれなくても大丈夫だから」
「無理なんかしてねーよ、俺も行きたい」
「ほとんど話とかしないと思うよ?」
「構わねーから、俺も行くっ」
「はぁ…、まるで駄々っ子だな」
「俺が運転するからさ。な、柚月、いいだろ?」
「……」
…仕方ない。
懇願するような颯太の瞳の煌めきに、つい押し負ける。
「放置されても文句言わないでよ?」
「絶対言わねー」
「分かった…、じゃ、行こっか」
一人でのブレイクタイムを諦めて、廊下に続くドアへと踵を返したそのとき、
「女の子がこんな時間から外出なんて、あまり感心しないね」
踏み込んでくるように届いた城崎さんの言葉は、足早に進もうとする私の歩みを止めた。
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少し続いた沈黙の後。
「…ちょっと、コーヒー飲みに行ってくる」
おもむろに立ち上がって、キッチンカウンターに置いたままの愛車の鍵を手にする。
(今日は、本当にいろんなことがあった日だったから…)
なんとなく、一人になりたい気持ちになった。
それは、疲れたときに多く見られる私のルーティン。
「コーヒー? そんなのここで飲めばいいじゃん」
「なんかちょっと、カフェで味わいたい気分なんだよね」
「それじゃ、俺も付き合うよ」
言うが早くその場から立ち上がった颯太は、ジャケットを手に取りソファーから離れた。
(…マズイな…、こういったときの颯太は、言うことを聞いてくれない確率が高い)
鼻歌混じりにジャケットの袖に腕を通す颯太を見つめながら、断る理由を巡らせる。
「…あのさ。ちょっと、本も読むかも…だしさ」
「本?」
「うん。」
「じゃ、俺もマンガ読もっかなー」
「いやあの、無理に付き合ってくれなくても大丈夫だから」
「無理なんかしてねーよ、俺も行きたい」
「ほとんど話とかしないと思うよ?」
「構わねーから、俺も行くっ」
「はぁ…、まるで駄々っ子だな」
「俺が運転するからさ。な、柚月、いいだろ?」
「……」
…仕方ない。
懇願するような颯太の瞳の煌めきに、つい押し負ける。
「放置されても文句言わないでよ?」
「絶対言わねー」
「分かった…、じゃ、行こっか」
一人でのブレイクタイムを諦めて、廊下に続くドアへと踵を返したそのとき、
「女の子がこんな時間から外出なんて、あまり感心しないね」
踏み込んでくるように届いた城崎さんの言葉は、足早に進もうとする私の歩みを止めた。
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