苛立ちのメカニズム ・4

文字数 699文字

「なに言ってんの、ほんとのことだし」
「まあ、あれだな。俺と柚月は、一番恋人に近いっつうか…な?」
「幼馴染だよ、ただの」
「冷てーな、柚月ー!」
「あのさ…、今日もうちで自分の家みたいに朝まで過ごすんでしょうが。これだけ好きにさせてあげてるのに、これ以上甘やかしてどうするの」

柔らかに目元を緩めつつも、バッサリと窘める。
けれど、颯太はめげることなくニヤリと眦を下げて続けた。

「なあ、柚月。子どものときみたいに、一緒に寝る?」
「は…? 隣の部屋で寝なさい、いつもみたいにっ」
「えー、いいじゃんかー」
「ぜんっぜん良くないっ。下心丸出しのエロ青年に興味はない」
「ひどい言われようだっ。健全な青年と言ってくれ!」
「無理。口が裂けても言えないな」

甘えるように二の腕に絡みつく颯太を振り払うようにしながら、大袈裟に苦笑を貼り付けた。
子どもの頃からずっと、颯太とのこういったコントみたいな掛け合いは当たり前の日常で、正直、気楽でいい。

「二人とも、すごく仲がいいんだね」
「幼馴染なので、それなりに」

羨ましげなその低音にもう一度<幼馴染>を強調した言葉を返すと、城崎さんはからかいを含めて颯太の顔を覗き込んだ。

「あくまで幼馴染だって、颯太。だから仲良しなんだね」
「咲也くんにまで言われなくても、最初から分かってるしっ」
「ふふっ、ちゃんと分かってるならそれでいい」

笑いを零しながらそう付け加えると、颯太はむくれたように唇を尖らせたけど。
つん…と指先でそれを弾いてやれば、途端に浮かれたように機嫌がよくなる。

「……」

そんな、まるで飼い慣らされた犬のような颯太の姿を目にした城崎さんは、やれやれと言った風な笑みを口角に刻んだ。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

藤沢柚月(フジサワ ユヅキ)23歳

主人公

特異な経歴ゆえに若くして医師


H162cm

城崎咲也(キザキ サクヤ)26歳

私立探偵事務所の所長


H179cm

真鍋颯太(マナベ ソウタ)23歳
柚月の幼馴染


H170cm

石羽 響也(イシバ キョウヤ)27歳

柚月の友人


H175cm


久動 琉成(クドウ リュウセイ)28歳

柚月が勤める大学病院の先輩医師


H176cm

倉橋 舞雪(クラハシ マユキ)23歳

柚月の親友


H156cm

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み