Rainy Day ・2

文字数 595文字

雨降りの夕暮れ時、帰路に就こうと病院の玄関ホールで佇む看護師の櫻を見つけた。
雨空を見上げる小柄なその姿に、静かに歩み寄る。

「今日はもう上がりなんだね、お疲れ様」
「あ!…柚月——…先生、」
「ふふ。一応ここは病院だから、先生って呼ぶのは仕方ないか」

そっと眦を歪めて笑いかけた。

私がこの大学病院に勤務することになった際、同世代の櫻はすでに看護師として働いていて、出会ってすぐ意気投合し、友達になった。

「雨だね」
「うん…」
「いきなり降り出して、傘がないからどうしたものかと困ってる子を発見したんだ」
「…え?」
「はい、これ」

一本の傘を手渡すと、櫻は驚いて恐縮しながら、受け取れないといった風に手を振った。

「これは柚月先生の傘なんじゃ…、」
「私は車だから大丈夫。バス停まではちょっと距離があるし、使いなよ」
「駐車場まで結構距離があるよ? 先生だって濡れちゃう」
「私が帰る頃には止んでるよ。…でも、今はなかなかの大粒の雨だ」

傘を押し戻そうとする櫻をさらりと交わして、降りしきる雨を掌で受けた。

「冬の雨って冷たいなあ。バス停まで傘がなかったら、確実に風邪引くよ」
「小走りで行くから大丈夫だよ」
「もしも滑って転んだら、それこそ大変だ」
「でも、」
「医師命令です。傘を使うように」

冗談めいて、それでいて凛と告げれば、

「……、…分かりました。ありがとう、柚月先生」

櫻は諦めたように、けれど嬉しそうに小さく頷いた。







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登場人物紹介

藤沢柚月(フジサワ ユヅキ)23歳

主人公

特異な経歴ゆえに若くして医師


H162cm

城崎咲也(キザキ サクヤ)26歳

私立探偵事務所の所長


H179cm

真鍋颯太(マナベ ソウタ)23歳
柚月の幼馴染


H170cm

石羽 響也(イシバ キョウヤ)27歳

柚月の友人


H175cm


久動 琉成(クドウ リュウセイ)28歳

柚月が勤める大学病院の先輩医師


H176cm

倉橋 舞雪(クラハシ マユキ)23歳

柚月の親友


H156cm

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