かわいい嘘 ・4
文字数 1,174文字
「俺はこの再会を祝って、今日は颯太と飲み明かしたいんだよっ」
「……」
確かに、その気持ちも分からなくはない。
もともとみんな仲の良かったクラスだったし、颯太と彼は、学校だけでなく放課後もよく一緒に遊んでいた。
そういえば、彼が中学受験をして別の私立中学校に通うようになってからは疎遠になり寂しくなったとも、颯太から聞いたことがあった。
(…再会を祝って、か…)
その久しぶりの再会に、水を差したくはない。
「なるほどね、そういう気持ちがあってのことか」
精一杯ぶすっとしながらも、もう引けないところまで来てしまった…という感じも否めない彼に微笑みかけて、納得したように頷いて見せた。
「分かった」
「…っしゃ!」
「じゃあさ、再会を祝して…、コレ、私にくれる?」
「ああ、いいぜ! …って、えっ!?」
「…、」
言葉の流れで了承したものの、すぐにギョッとなった彼の手からブランデーのグラスをひょいと取り上げる。
琥珀色の液体の中で、数少ない氷がカランと音を立てた。
「いや、それさ…、見たら分かると思うけどロックだし度数も高いし、おまえにはちょっと…、」
「優しいな、気にしてくれて。さすがは元クラスメイト」
「いやあの……、ちょっと、飲むのやめとけ、な?」
「え、なんで?」
「なんでって…、やっぱソレ、俺が飲むわ」
「えっと……一気飲み、だっけ?」
「おまえ、人の話ちゃんと聞いてるか!?」
「それじゃ、再会を祝して…、」
「っ、おい、ちょっと待てっ、…!」
「…ッ、———」
彼がオロオロと狼狽えるその前で、たっぷり注がれているブランデーを一気に飲み干した。
「っ、……。ごちそうさま…、なかなかおいしかったよ」
「…、おま…え、大丈夫か…?」
空になったグラスを私から恐る恐る受け取り不安そうに気遣う彼に、穏やかな笑みを向けながらも目元を引き締める。
「心配してくれてありがと、平気だよ。でも…、あまりこういった無茶飲みはこれからもしないほうがいい。一応、医者をやってる私が言うんだから、少しくらい話を聞いておいても損はないと思うな」
「…わ、分かった…」
「救急車のお世話になることなく、みんないい気分のまま楽しく過ごして、次もまた元気に会いたいじゃん?」
「……そうだな…、確かにそうだ」
「ね…、」
激昂することなく感服したように私の行動と文言を受け入れてくれた彼に向けてハイタッチを促すと、
「おう、」
少しだけ照れくさそうに笑って、手のひらを優しく叩き合ってくれた。
「大丈夫かよ、柚月っ、俺、チェイサー持ってくるわ!」
私の無茶な飲酒に焦った颯太が、よろける足元を何度も正しながら、ミネラルウォーターの入ったピッチャーを探し回る。
その姿が、なんだかとても微笑ましくて。
「平気だよ、颯太、急ぐとほら、危ないって…」
静かに笑って。
ダイニングソファーに、今度は自分が身を預けるようにしてペタリと腰を下ろした。
→
「……」
確かに、その気持ちも分からなくはない。
もともとみんな仲の良かったクラスだったし、颯太と彼は、学校だけでなく放課後もよく一緒に遊んでいた。
そういえば、彼が中学受験をして別の私立中学校に通うようになってからは疎遠になり寂しくなったとも、颯太から聞いたことがあった。
(…再会を祝って、か…)
その久しぶりの再会に、水を差したくはない。
「なるほどね、そういう気持ちがあってのことか」
精一杯ぶすっとしながらも、もう引けないところまで来てしまった…という感じも否めない彼に微笑みかけて、納得したように頷いて見せた。
「分かった」
「…っしゃ!」
「じゃあさ、再会を祝して…、コレ、私にくれる?」
「ああ、いいぜ! …って、えっ!?」
「…、」
言葉の流れで了承したものの、すぐにギョッとなった彼の手からブランデーのグラスをひょいと取り上げる。
琥珀色の液体の中で、数少ない氷がカランと音を立てた。
「いや、それさ…、見たら分かると思うけどロックだし度数も高いし、おまえにはちょっと…、」
「優しいな、気にしてくれて。さすがは元クラスメイト」
「いやあの……、ちょっと、飲むのやめとけ、な?」
「え、なんで?」
「なんでって…、やっぱソレ、俺が飲むわ」
「えっと……一気飲み、だっけ?」
「おまえ、人の話ちゃんと聞いてるか!?」
「それじゃ、再会を祝して…、」
「っ、おい、ちょっと待てっ、…!」
「…ッ、———」
彼がオロオロと狼狽えるその前で、たっぷり注がれているブランデーを一気に飲み干した。
「っ、……。ごちそうさま…、なかなかおいしかったよ」
「…、おま…え、大丈夫か…?」
空になったグラスを私から恐る恐る受け取り不安そうに気遣う彼に、穏やかな笑みを向けながらも目元を引き締める。
「心配してくれてありがと、平気だよ。でも…、あまりこういった無茶飲みはこれからもしないほうがいい。一応、医者をやってる私が言うんだから、少しくらい話を聞いておいても損はないと思うな」
「…わ、分かった…」
「救急車のお世話になることなく、みんないい気分のまま楽しく過ごして、次もまた元気に会いたいじゃん?」
「……そうだな…、確かにそうだ」
「ね…、」
激昂することなく感服したように私の行動と文言を受け入れてくれた彼に向けてハイタッチを促すと、
「おう、」
少しだけ照れくさそうに笑って、手のひらを優しく叩き合ってくれた。
「大丈夫かよ、柚月っ、俺、チェイサー持ってくるわ!」
私の無茶な飲酒に焦った颯太が、よろける足元を何度も正しながら、ミネラルウォーターの入ったピッチャーを探し回る。
その姿が、なんだかとても微笑ましくて。
「平気だよ、颯太、急ぐとほら、危ないって…」
静かに笑って。
ダイニングソファーに、今度は自分が身を預けるようにしてペタリと腰を下ろした。
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