かわいい嘘 ・3
文字数 1,342文字
フレンチレストランでの皆との再会は、予想していた以上に感慨深いもので。
久しぶりに会えた喜びをクラスメイトたちとともに分かち合いながら、懐かしい笑顔に囲まれる賑やかな時間を過ごしていた。
「……」
一息つこうと、壁際に設置してあるアンティーク調の木彫りが美しいダイニングソファーに腰を下ろしてすぐ、
「うおおっ、柚月だあああ~~~っ!」
颯太が勢いよく膝上になだれ込んできた。
「…っ、こら、颯太、……これは相当飲んでるな…」
飴玉が溶けるようにテロテロになった颯太からは、過剰にお酒を摂取したのが見て取れる。
「飲みすぎだよ…」
「へへへ、いっぱい飲んじゃったっ」
「バカだな、知らないぞ」
「もう飲めない、これ以上はお酒入んない~~」
「…、」
颯太が口を開くたびにモワッと広がるアルコールの匂いを吸い込んだだけでも良いそうだ。
ちょっぴり呆れながらも、そんな颯太の額をツンと人差し指で小突いた。
「まったくもう、当たり前だよ、それ以上飲んだら体にも悪い——」
「おい、颯太! まだ飲み足りねーぞー!」
私の忠告を覆いつくすように大きな声量を撒き散らしながら、ゆらゆらと現れた男子クラスメイトに、颯太も私も揃って目を向ける。
彼の右手には、少量の氷と琥珀色の飲み物が満杯に入ったロングカクテル用のグラス。
左手には、その飲み物の正体を表す洋酒の洒落た瓶。
見るからに、キツめのオンザロック。
颯太は私の膝からむくりと起き上がると、ダイニングソファーに体を大の字に投げ出して唇を尖らせた。
「さすがにもう飲めねえって~~」
「ダメだっ、コレを一気に飲みするまではっ」
(いやいや、何を言ってる)
悪酔いしているのか、無茶振りをする男子クラスメイトに内心で失笑する。
多少呂律も回ってないから、彼も相当な量を飲酒しているのだろう。
「もういらねえって、まだ二次会もあんのにっ」
「一気飲みするまで次なんかねーぞっ」
「マジでいいって…、」
無理難題を吹っ掛けられて、颯太はゆるゆると首を振りながらおもむろに立ち上がる。
その際、無遠慮に胸元に押し付けられたグラスを静かに押し返した。
「もうこれ以上は、さすがに飲まないほうがいいな」
颯太のその動作が合図となって、男子クラスメイトを見据えて苦笑交じりに制止すると、
彼は不満の色で染まる顔をありありと晒して口端を歪めた。
「なんだよ、柚月っ、医者で偉いのか知らねーけど、女のくせに男の付き合いにいちいち口出しすんなよっ」
「——おい、そんな言い方ねーだろ、」
「やめろ、颯太」
酩酊しながらも途端に反論の狼煙を上げて、憤りで自己を塗り替えていく颯太の腕を慌てて掴む。
「でもさ、こいつ、なんか失礼じゃん…、」
「いいよ。クラスメイトの言うことだ、気にしてないよ」
立ち上がって颯太の肩を柔らかく叩き、落ち着かせてから壁際のソファーに再び座らせると、
男子クラスメイトに振り向いて軽く肩を竦めた。
「久しぶりの再会なのに、ちょっとくらい混ぜてくれたっていいじゃん」
「べ、別に…、おまえのこと拒否ってるわけじゃねーけどさ…」
「それは嬉しいな」
「…、」
「…ね、つまりは、どうしてもそれを飲めってこと?」
度数の高いアルコールで満たされたグラスを指差して訊ねると、
「ああっ、そうだっ」
彼はそれを前に掲げるようにして大きく頷いた。
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久しぶりに会えた喜びをクラスメイトたちとともに分かち合いながら、懐かしい笑顔に囲まれる賑やかな時間を過ごしていた。
「……」
一息つこうと、壁際に設置してあるアンティーク調の木彫りが美しいダイニングソファーに腰を下ろしてすぐ、
「うおおっ、柚月だあああ~~~っ!」
颯太が勢いよく膝上になだれ込んできた。
「…っ、こら、颯太、……これは相当飲んでるな…」
飴玉が溶けるようにテロテロになった颯太からは、過剰にお酒を摂取したのが見て取れる。
「飲みすぎだよ…」
「へへへ、いっぱい飲んじゃったっ」
「バカだな、知らないぞ」
「もう飲めない、これ以上はお酒入んない~~」
「…、」
颯太が口を開くたびにモワッと広がるアルコールの匂いを吸い込んだだけでも良いそうだ。
ちょっぴり呆れながらも、そんな颯太の額をツンと人差し指で小突いた。
「まったくもう、当たり前だよ、それ以上飲んだら体にも悪い——」
「おい、颯太! まだ飲み足りねーぞー!」
私の忠告を覆いつくすように大きな声量を撒き散らしながら、ゆらゆらと現れた男子クラスメイトに、颯太も私も揃って目を向ける。
彼の右手には、少量の氷と琥珀色の飲み物が満杯に入ったロングカクテル用のグラス。
左手には、その飲み物の正体を表す洋酒の洒落た瓶。
見るからに、キツめのオンザロック。
颯太は私の膝からむくりと起き上がると、ダイニングソファーに体を大の字に投げ出して唇を尖らせた。
「さすがにもう飲めねえって~~」
「ダメだっ、コレを一気に飲みするまではっ」
(いやいや、何を言ってる)
悪酔いしているのか、無茶振りをする男子クラスメイトに内心で失笑する。
多少呂律も回ってないから、彼も相当な量を飲酒しているのだろう。
「もういらねえって、まだ二次会もあんのにっ」
「一気飲みするまで次なんかねーぞっ」
「マジでいいって…、」
無理難題を吹っ掛けられて、颯太はゆるゆると首を振りながらおもむろに立ち上がる。
その際、無遠慮に胸元に押し付けられたグラスを静かに押し返した。
「もうこれ以上は、さすがに飲まないほうがいいな」
颯太のその動作が合図となって、男子クラスメイトを見据えて苦笑交じりに制止すると、
彼は不満の色で染まる顔をありありと晒して口端を歪めた。
「なんだよ、柚月っ、医者で偉いのか知らねーけど、女のくせに男の付き合いにいちいち口出しすんなよっ」
「——おい、そんな言い方ねーだろ、」
「やめろ、颯太」
酩酊しながらも途端に反論の狼煙を上げて、憤りで自己を塗り替えていく颯太の腕を慌てて掴む。
「でもさ、こいつ、なんか失礼じゃん…、」
「いいよ。クラスメイトの言うことだ、気にしてないよ」
立ち上がって颯太の肩を柔らかく叩き、落ち着かせてから壁際のソファーに再び座らせると、
男子クラスメイトに振り向いて軽く肩を竦めた。
「久しぶりの再会なのに、ちょっとくらい混ぜてくれたっていいじゃん」
「べ、別に…、おまえのこと拒否ってるわけじゃねーけどさ…」
「それは嬉しいな」
「…、」
「…ね、つまりは、どうしてもそれを飲めってこと?」
度数の高いアルコールで満たされたグラスを指差して訊ねると、
「ああっ、そうだっ」
彼はそれを前に掲げるようにして大きく頷いた。
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