16節
文字数 1,534文字
スピカはその様子を窓越しに外から伺っていた。
「上手くまとまったっぽいかな?
これでやっと一歩前進したわ。
さて、ビエラ様は、と……」
「(ー'`ー;)ムスー」
「もう〜
今回あんまり出番がなかったからって、そんな不機嫌にならないで下さいよ……
アルデバラン記者が一緒だったから、ビエラ様を頼る訳には行かなかっただけですって!」
「私がどうかしましたか?」
「ゲッ!?また出た!?」
呼んでもいないのに、またしてもアルデバランが現れた。
何故ここにいるとわかったのか?そんな質問は当然無視した彼は、少し話があると誰にも話を聞かれない場所にスピカを連れ出す。
「今回は図らずも貴方と協力できて楽しかったですよ。
面白い記事が書けて上司の機嫌も取れました。
それで何かお礼をと思って来た次第です。」
「お礼?」
「まだ公表を止められてる特ダネがひとつあるんですが、それを特別に教えて上げましょう。」
「いいですよ、別に……
どうせ碌な事じゃ……」
「あの騒動以来、姿を見せていないアンサーですがね……
一昨日、自宅で首を吊っているのが発見されました。」
「えッ!!?」
アンサーが死んだ。
予想だにしていなかった情報に目を丸くするスピカ。
また揶揄われているのかと疑ったが、アルデバランからはあの相手を小馬鹿にした不快な笑みが見られない。
もし真実だとするのなら……
「誰が殺ったんですか?」
「フフフ、やっぱり面白い方だ。
国民からのバッシングに耐えかねて自殺した、とは思わないんですね。」
「あの日アイツが去り際に言ったセリフ覚えてます?」
〜〜〜〜〜
『お前らは絶対に許さない!
人の足を引っ張る外道には必ず罰が下る!覚悟していろッ!!』
〜〜〜〜〜
「……って言ったんですよ。
復讐する気満々だった奴が自殺する訳ないでしょ。」
「私も全く同じ事を思いましたよ。」
アンサーに後ろ盾がいる事は分かっていた。
奴が今まで好き放題やっても罪に問われなかったのは、その後ろ盾の働きによるものだ。
恐らくスピカ達への復讐も、その後ろ盾を使うつもりだったのだろう。
だが仲間割れしたか見切りを付けられたかで、逆に自分が罰せられた。
というのがアルデバランの推測だ。
「確証を得る為、色々調べようと思ったんですが……」
「……ですが?」
「この件については手を引く事にしました。
深追いすると火傷じゃ済みそうになかったので。」
「そんなにヤバい相手なんですか?」
自殺にしては明らかに不自然な点がいくつもある。
なのに警察は碌に調べず、隠す様にさっさと自殺で片付けようとしている。
これが犯人の根回しによるものだとしたら、国家権力にまで影響力をもつ強大な組織という事になる。
そんな組織はいくつもない。当てはまるのは……
「オフィウクス商会……!?」
確証を得るまで調査していない以上、肯定も否定もできない。
だがもしそうだとしたら、奴らは殺人の1つや2つは簡単に揉み消せるという事が証明される。
オフィウクス商会はこの国の中枢を掌握しつつある。
思っていた以上に、急速に。
「ひと月前にも貴方は奴らを邪魔している。
2度目となれば完全に目を付けられた可能性が高い。」
「……マジ?」
「気を付けた方がよろしいですよ。
お仲間にもそうお伝え下さい。」
「…………」
忠告を終えたアルデバランはそのまま帰って行った。
デネブ邸に戻って来たスピカは、まだちょっと拗ねてるビエラの肩をガッシリ掴んで真顔で乞う。
「今日から夜は一緒に寝ましょう。
っていうか私が寝るまで寝ないで下さい!」
「(´・д・`) エエ…」
ーーーー 第8章『偽りの白鳥』 完 ーーーー