5節
文字数 1,428文字
だが女ばかり集まって黙って黙々と作業する訳もなく、おしゃべりしながらのんびりと調査するのだった。
「カノーさんはどこにお住まいなんですか?」
「ネブラ湖に小島があるのですが、そこで姉妹4人で暮らしています。」
「随分遠くから来たんですね。
相当早く家を出たんじゃないですか?」
「いえ、空を飛んで来れば1時間も掛からないので。」
「空を飛んで!?
(自家用飛行機ってやつ!?この若さで大成功してるんだ……)」
「スピカさんはどちらからいらしたんですか?」
「私とビエラ様は第11居住区から。」
「あんな人間の多い場所から!?
(子連れで正体を隠しながらの生活は大変でしょうに……)」
「「ご立派ですねぇ……」」
お互いに感心し合うスピカとカノー。
噛み合っている様で噛み合ってない会話を聴いて、アークは何となく状況を察した。
スピカはカノーを人間だと、カノーはスピカを悪魔だと認識している事に。
(何か面倒臭い事になってるな……
訂正した方が良いか……)
調査しながらもスピカ達の方が気になって仕方ない。チラチラと視線を送り様子を見張っていると、それに気付いたスピカが声を掛けてくる。
「ちょっと〜、いくらカノーさんが美人だからってそんなチラ見しないでよ。
思春期の男子じゃないんだから〜!」
「なッ……!違うわボケ!!」
(こっちの心配も知らないでコイツは……ッ!!
ん?そう言えばビエラ様は何処行った?)
調査開始早々1人でフラフラ〜と離れていったビエラが気になり周りを見渡してみる。
見つけた場所は……
「(·ω·)♪」
「オ、オイッ!危ないぞッ!!」
なんとビエラは穴の中に足を踏み入れていた。
穴はアリ地獄の様に中央に向かって急斜面になっている。うっかり足を滑らせでもすれば……
怖い想像をした瞬間、それは見事に現実となる。
ビエラの立っていた足場が崩れ体勢を大きく崩す。身体が傾き、頭が穴の内側にたおれr。
間に合わないと分かりつつも駆け寄ろうとするスピカとアーク。その横を一陣の風が吹き抜けた。
その突風に思わず一瞬目を瞑った。再び目を開けると、そこには転げ落ち掛けていたビエラを抱き止めるカノーの姿があった。
「大丈夫?ビエラちゃん?」
「(*゚ェ゚*)ポッ」
「あ、ありがとうございます……
足早いんですね……」
「こう見えて結構鍛えていますの、ウフフ!」
(いやいやいやいや!
ほぼ瞬間移動だったぞッ!気付けよ、いい加減!!)
安全なところまでビエラを連れ戻し、どうして穴の中に入っていたのか尋ねる。するとビエラは穴の中を指差した。
指し示す先を見ると、何かがキラキラと太陽光を反射しているのが目に入った。
「あれはさっき投げた私のアミュレット!
あれを取ろうとしてくれたんですね。」
「ならワシが取って来てやる。」
「待って。その必要はないわ。」
スピカは徐に右手を上げた。
すると穴の中に落ちていたアミュレットが1人でに浮かび上がり、スピカの手元に舞い戻って来た。
「呼び戻す事もできるのか、ソレ。」
「初めて見る技ですね……
失礼ですがスピカさんは何タイプですか?」
「タイプ?
え〜と……、聖職者タイプ?」
「まぁ!性蝕者(サキュバス)ですか!?
意外……あ、いえ!ごめんなさい……」
「ハハ、よく言われます……」
(気付くチャンスは幾つもあるのに、まだ誤解が解けてない……
どっちもアホだ……)