7節
文字数 1,391文字
いや、寧ろあの顔は勝つ確信がある者の顔だ!
いったいどんな秘策が……
アークは思わず固唾を呑んだ。
「ひとつ教えて上げます。
これを知ればきっと考えを改めるでしょう。」
力ではなく言葉で説得する作戦か!?
確かにスピカは聖職者。相手に神の教えを説き、信じさせるのが仕事。
言わば洗脳のプロ!人心掌握こそスピカの真の能力!
この状況を打開するかもしれない!?
「実は……
星教の神様は既に来てるんです。」
「な!何ですって!?」
(……は?
おい、まさか……)
いや落ち着け。そんな事ある訳ない。
今この展開でそんな話をすれば、どんな空気になるか分からない奴が主人公である筈が……
「改めてご紹介します。
こちらが……星教の神様ですッ!!」
「(๑• ̀д•́ )✧ ドヤッ‼」
ドヤる2人を夜の風が冷たく迎える。
圧倒的沈黙が島を包み、時の流れすら忘れさせた。
「これで星教の神様は敵ではないって分かったでしょう!
こんな素直で良い子が、そんな酷い事する訳ありません!
さぁ、カノーさんもビエラ様を信じて下さい!
ビエラ様の手にかかれば鉄巨人なんてワンパンですッ!!」
「(๑•̀ - •́)و✧ ガンバル!」
(アホだ。バカコンビだ……)
流石のカノーもこんな話は信じられず、馬鹿らしくなって一瞬思考が停止した。
その隙を突いて何者かが猛スピードで風を切りながら迫る!
そしてそのスピードを保ったままスピカら3人を拾い上げ、その場から連れ去る。
駆け付けた人物は……
「アスピちゃん!?」
「私が皆さんを島の外までお送りします!
しっかり掴まってて下さいッ!!」
一直線に島の外へ向かって疾走する。
ひ弱そうに見えるが流石は悪魔。アスピのスピードはかなりの物で、一瞬で沿岸部にまで到達する。
だがカノーはそれを軽々上回る。あっという間に追い付かれ、後ちょっとという所で行く手を塞がれる。
「アスピッ!!何をしているの!?」
「カノーお姉ちゃん!止めてッ!!
スピカさん達は悪い人達じゃないって知ってるでしょ!?」
お互いに説得しようと試みるが言い争いは平行線を辿る。
一向に決着の見えない議論に見切りをつけたカノーは強硬手段に出る。
「”Mεραζο-μα”!」
右手を高く掲げると空中で巨大な火球が出来上がる。
大きい。ゴーレムに対して撃った火球の10倍はある。
力強く煌々と燃え上がる様は太陽を彷彿とさせる。
「退きなさいッ!!
私の操る炎は”獄炎”。悪魔の身体も灰にする事は知ってるでしょ!」
「イヤッ!!」
アスピは火球を前にしても一切引かない。
カノーは絶対に妹を手にかけたりしない。その確信があった。
睨み合ったまま立ち竦む二人。このまま朝を迎えるのかとさせ思えた、その時……
一匹の虫が火球の明かりに引き寄せられ、フラフラとカノーの顔の前を横切った。
「キャッ!蛾ッ!!」
カノーは蛾に驚き、追い払おうと咄嗟に右手を振ってしまった。
その拍子に意図せず火球が投げ放たれてしまう!
アスピは避けるため慌てて大きく後ろに飛び退いた。
しかし突然のことで身構えられておらず、しがみ付きそびれたビエラが振り落とされる!
火球は速度を落とす事なくビエラに迫る!
ダメだッ!間に合わないッ!!