4節
文字数 1,228文字
建物を出た2人は聴いた話を整理していた。
「悪魔国は実在した……
と言う事は”あの話”も本当なのかも知れないな……」
「あの話?」
「悪魔国がどうやって滅びたと言われているか知っているか?」
「確か……、奴隷の一斉蜂起だったか?」
「そうだ。
その奴隷だが、恐らくそれは俺達のような魔人を指しているんだろう。」
魔人は自分の魔導書に書かれた事には逆らえない。絶対服従を強いられる様は奴隷の定義と一致する。
少し前までのアークのように望まない事をやらされ続け、遂には不満が爆発して反乱。
充分考えられるシナリオだがアークは1つ疑問に思う。
「そうだとしても、魔人が悪魔に勝てるとは思えないな。」
悪魔の住む国で反乱を起こしたのなら、敵は当然悪魔達になる。
魔人は悪魔の力を半分だけ継承した言うなれば”悪魔もどき”。当然悪魔より力は劣る。
当時どれ程の数が反乱を起こしたのか分からないが、ちょっとやそっと数が多いぐらいでは勝負にもならないだろう。
「その通りだ。
だからあの説の信憑性が増して来る。
『鉄巨人』 の存在が。」
奴隷達の反乱を指揮したのは1人の鉄の身体を持つ巨人だったと言われている。
その巨人の力は悪魔をも凌駕し、その力をもって反乱を成功に導いた。という伝説がある。
そして反乱の後、鉄巨人は空に消えたという言い伝えだ。
「この話、星教の神話に少し似ていると思わないか?」
星教の神話は[神が災厄から人間を救った]という物語。
そして最期は神が空の彼方へ旅立って締め括られている。
神 = 鉄巨人
災厄 = 悪魔
人間 = 魔人など悪魔に支配されていた人々
と考えれば、悪魔国の伝説と内容はほぼ一致する。
そうだとしたら、星教会のトップであるプロキオンが悪魔国や魔人について詳しい事も頷ける。
「まぁ、憶測の域を出ないが……」
「ワシには関係無い話だ。
宗教にも歴史にも興味無い。」
アークはそっけない態度でそう返すと、魔法で箒を呼び出し宙に浮かび上がった。
「ワシは飛んで帰る。お前は?」
「俺はバスで帰る。
これからも、なるべく魔獣である事は隠し続けるつもりだ。」
アークと別れたアルクは1人バスを待ちながら、プロキオンが最後に言った言葉を思い出す。
『あの子には自力で”真実”に辿り着いて欲しいのです。』
この言葉、捉え様によってはまだ隠された真実があるという意味にも取れる。
悪魔国の痕跡が全く残っていない理由も、その真実と関係があるのか……?
悪魔。魔獣。魔女。
そして神の如き力を持つ少女ビエラ。
今、1000年前に消えた国と関わりの強い者が一斉にこの街に集まり始めた。
これは単なる偶然か。それとも何かの啓示か。
(この国……
いや、この世界で何か大きな事変が起きようとしているのかも知れないな……)
ーーーー 幕間『ヤバすぎ都市伝説 悪魔国バース』 完 ーーーー