5節

文字数 1,715文字

——11区バス停。

「お待たせ、ビエラちゃん。」
「……ん?ミモ子は?」

 掃除道具を片付け、バス代を持って来たリギルとポルックス。
 これで準備が整ったと思いきや、ミモザがいない事に気付く。
 ビエラによるとミモザも取って来たい物があると言って一度家に帰ったという。

 しかし何を取りに行ったのだろう?10歳未満はバス代無料なのだが……

「お待たせーっ!
 いい物持って来たよ!」

 ミモザが持って来たのはサンドイッチケース。
 彼女が旅をしていた時、お弁当入れとしてよく使っていたという。

「モモンガちゃんはここに入れとこ!
 そうすればアホ毛に噛み付かれる事は無いでしょ?」
「(^∀^) サンキュ!」

 4人揃ったところで改めて目的地までの道順を確認する。
 ポルックスが鞄から地図を取り出し、全員の前で広げる。

「11区から8区への直通バスは出てないんだ。
 だから一度商業区へ行って、そこから8区行きのバスに乗り換えるよ。」
「遠回りになるんだね。
 歩いた方が速くないの?」

「この街は入り組んでるからね。
 11区内ならともかく、他街区の道は僕も詳しくないんだ。」

 ここ十数年の人口爆発に伴って、コスモス中何処も突貫工事で開発され続けている。
 そのせいで街中は迷路同然。あちこちで建物が建ったり潰れたりを繰り返しているので、1年以上経った地図は役に立たないとすら言われている。

 だから極力徒歩移動は避けるのが吉。
 近くてもバス移動の方が確実という訳だ。

「パパが商業区は危ないって言ってたけど大丈夫かな……?」
「実はオレらも親無しで行くのは初めてなんだけど……
 まぁでも大丈夫だって!何度も行ってるから!」

 ざっと道のりを説明し終わった頃、ちょうどバスが来た。
 早速乗り込み商業区へ向かった。



——商業区。

 無事商業区まで辿り着いた。
 いつも通りここは凄い数の人だ。バス停周辺は特に混み合う。

「8区行きのバスって何処だ?」
「僕が調べて来るよ。
 みんなはここで待ってて。」

 ポルックスは単身で人混みを掻き分け、8区行きのバスを探しに行く。
 しかしちょっと見渡しただけでも10以上の乗り場がある。案内板を見ようにも人集りができており、背の低いポルックスではよく見えない。

 誰かに聞いた方が早い。
 近くにバスの職員を見つけ尋ねるが……

「あの、8区行きのバスって何処から乗れますか?」
「はいはい、8区はですね……ってガキかよ。
 迷子は迷子センターに行ってくれ。」

「いや、迷子じゃなくて……
 乗り場を訊きたいだけなんですけど……」
「だからッ!!行き方わかんないなら迷子だろ!
 迷子の世話は俺の担当じゃないんだよッ!!」

 乗り場を尋ねただけなのに怒られた……
 納得いかない怒りを覚えつつも、言われた通り迷子センターに行く。
 が、そこでも……

「8区への行き方?
 知らないわよ!そんなの乗り場にいる職員に訊きなさい!!」
「訊きましたけど、そしたらここに行けって……」

「ここは迷子を預かる所なの!
 今日も引っ切り無しに迷子が来てるの!
 バスの乗り方を教えてる暇なんて無いわよッ!!」
「えぇ……」



——一方、リギル達。

 ポルックスが戻るまで大人しく待つ3人。
 だったが、そこに1人のオバちゃんが現れ……

「ちょっとアンタら!!」
「はい?オレらっすか?」

「そんなとこで固まらないでくれる!?
 そこ掃除しなきゃいけないんだけど!!」
「はぁ、わかりました……
 (別に怒らんでも……)」

 大人しく退いて場所を開ける。
 が、移動した先でもまた……

「邪魔だ、ガキッ!
 今から荷運びでそこ通るんだよ!退け退けッ!!」
「すいません……
 (そんなキツイ言い方すんなよな……)」

 今度はオッサンに怒鳴られた。
 仕方なくまた移動しようとした矢先、うっかり人の流れに巻き込まれてしまう。
 このままでは集合場所から離れてしまう。リギルは強引にその流れを抜け出るが……

「フゥ……何とか抜け……
 あれ!?
 ビエ子は!?ミモ子も居ねぇ!?」

「あの……ッ!
 通して下さ……キャッ!!」
「(>ロ<*) ア~レ~‼︎」

 小さい2人は流れに抗えず、それぞれ別々の方向に流されて行く。
 それをリギルは慌てて追いかけるのだった。
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登場人物紹介

名前:スピカ=ウィルゴ

性別:女

年齢:27

身長:162センチ

この物語の主人公。

基本は優しい心の持ち主だが平和主義者というわけではなく、必要とあれば荒事も辞さない。

有り過ぎる行動力と小賢しい悪知恵が働く以外はごくごく普通の一般人。

名前:ビエラ

性別:女

年齢:?(見た目は7歳くらい)

身長:117センチ

準主人公。

何故か一切声を出すことが出来ない。その代わりなのか感情に合わせて動きを変える、アホ毛の様なもの(触覚?)が頭頂部から生えている。

性格は奔放で好奇心旺盛。なのにビビり。

名前:アクルックス=クルス

性別:男

年齢:30

身長:188センチ

大柄で逞しい体躯を持ち、素行には大人の落ち着きがある。愛娘が一人いて、名前は”ミモザ”。

彼と知り合ったことをきっかけに、スピカ達はとある猟奇事件に巻き込まれる。(2章へ続く)

名前:アークトゥルス=ボーティス

性別:女

年齢:18歳

身長:155センチ

やや素直さに欠けるが根は真面目で勤勉。このお話では貴重な十代女子。

農夫達からの依頼で農作物を荒らす魔女の解決に乗り出したスピカ。その正体がなんと彼女だった。(3章へ続く)

名前:アルタイル=アクィラ

性別:男

年齢:51歳

身長:175センチ

宇宙や世界の真理を探究する高明な学者。『三賢人』と呼ばれる3人の天才の一人。

彼がビエラに関する情報を持っていると聞いたスピカは、彼の働く学術院を訪れるが…(4章へ続く)

名前:カノープス=カリーナ

性別:女

年齢:28歳

身長:161センチ

おっぱい担当兼、物語の核心に絡む角の生えた美女。しっかり者だが若干天然が入っている。

ビエラと関係があるかもしれない謎の飛来物の調査に来たスピカ一行。そこで偶然彼女と出くわす。(5章へ続く)

名前:リゲル=オリオン

性別:男

年齢:28歳

身長:176センチ

女と見紛うレベルの超美形。それでいて中身も聖人君子の出木杉君タイプ。

仕事でとある人物の護衛の任についていた彼は、その過程で思いがけず"裏の人間"と邂逅する。(7章へ続く)

名前:デネブ=シグナス

性別:男

年齢:50歳

身長:168センチ

数々の名品を生み出してきた機工技師。アルタイルと並ぶ『三賢人』の一人。

彼、強いては彼が代表を務める工房の力が必要になったスピカ。しかしその工房はある男に乗っ取られていた。(8章へ続く)

名前:花圃の魔女(本名不明)

性別:女

年齢:23歳

身長:159センチ

アークトゥルスの元仲間。手下を従えて群れるのが好きなお局気質の女性。

平和に暮らしていたアークの元に突然現れた彼女は、魔女である者は決して逃れられない"悲運"を告げる。(9章へ続く)

名前:(左から)ミモザ=クルス、ポルックス=ジェミニ、リギル=ケンタウルス

性別:女、男、男

年齢:7歳、10歳、10歳

身長:120センチ、139センチ、148センチ

ビエラの友達。いずれも喋れず身元不明なビエラを変に思わず、分け隔て無く受け入れる豊かな心を持つ。

公園である小動物を拾ったビエラは3人にどうするべきか相談する。それがキッカケとなり、子供達4人だけの小さな冒険が幕を上げる。(10章へ続く)

名前:デネボラ=レオ

性別:女

年齢:24歳

身長:166センチ

小さな喫茶店を経営する若き商売人。オシャレでギャルっぽい見た目だが、性格は実直で働き者。

先輩の手伝いで第13居住区にやって来たスピカ。そこでデネボラと偶然出会い話に華を咲かせていると、突如ある男が乱入して来て大混乱を巻き起こす。(11章へ続く)

名前:ミアプラキドゥス=カリーナ

性別:女

年齢:26歳

身長:148センチ

行方不明のカリーナ四姉妹の次女。子供の様に小柄で遊び人気質。

全国民が対象となる年に一度の健康診断。それが始まるとほぼ同時に、何故か行方不明者が続出し始めた。その事件にはどうやらミアが関係している様で……(12章へ続く)

名前:ベガ=リラ

性別:女

年齢:52歳

身長:155センチ

コスモス1の名医と言われる三賢人の1人。おっとりゆったりした立ち居振る舞いで、誰しも初めは癒し系の印象を受けるが、その本性は……

ずっと探していたベガを遂に見つけたスピカ。しかし彼女はコスモスの地下に隠された、恐ろしい闇に深く関わっていた。(13章へ続く)

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