2節
文字数 1,300文字
「”魔女”の仕業ですか?」
農園を荒らした人形達の正体。それは数週間前から東の森に住み着いた、とある魔女が操る物だと言う。
今回の様に作物を奪い取って魔女の住処へ持ち帰っているらしい。
もちろん警察には相談したし、何度か魔女を捕まえようと試みた事もある。
しかし魔女の魔法の前に警察では力不足で、何もできずに追い返される始末。そのため未だに被害を被っている。
「今度は星騎士団に動いて貰うってのはどうだ?」
「ダメダメ!
あんなお飾り騎士団。警察の方が強いまである。」
スピカ達がハマルお婆さんに事情を聴いているすぐ横で、農夫達が腕を組みながら話し合っている。
いっそのこと魔女が住み着いた森ごと焼き払ってはどうか、などという物騒な案も出る。そんな危険でリスクの大きい案が通る訳もなく当然却下となるが、相当怒っている事は伺える。
張り詰めた空気に息苦しさを感じていると……
「スピカ司祭が退治すれば良いじゃん。」
「ちょっと何言い出すの!?リギル君!!」
慌てて黙るように言ったが時既に遅く、リギルの言葉を聞いた農夫が質問する。
「スピカ司祭ってのは誰だい?」
「この人だよ。
吸血鬼をやっつけたスピカ司祭なら魔女ぐらい楽勝だって!」
1か月前、新聞にデカデカと載っていたのはこの人の事か!?と驚嘆の声が上がる。
本当かと詰め寄られスピカは苦笑いをしながら肯定する。ここまで来るともう次の流れは決まっている様なものだった。
「どうか私達を救って頂けませんか?」
(エェ〜〜!?)
正直にあれは自分の力じゃないから協力出来ないと断ろう。
そう思った矢先、猟銃を撃っていたオヤジが不機嫌そうに口を挟む。
「お前ら正気か?
新聞には神の力を使って撃退したとか眉唾なことしか書いてなかったぞ。
大方、偶々助かったのを神様のお陰だとか言って信者増やそうとしただけだろ。
手ェ組んで寝言ほざくぐらいしか出来ない聖職者風情に魔女を倒せる訳がねぇ!」
大勢の人の前で無能と貶され顔をしかめるスピカ。
さっきもスピカ達が近くにいるのに容赦無く撃ってきた。どうやらかなり乱暴な人物のようだ。
ムッとしたがこの手の人に反論しても火に油。冷静に聞き流そうとしたが……
「神様を信じる訳ではありませんが、偶然で吸血鬼を倒せるなんてそれこそ眉唾ですね。
大人の癖に論理的に考えられないんですか?」
「グゥッ……!
何だとこのガキッ!!」
ポルックスにもっともな反論をされてカッとなったオヤジは大声で彼を驚かす。
しかし他の子供達が加勢しポルックスを援護する。
「スピカ司祭はウソなんてつかねぇよ!」
「そうよ!
スピカ司祭のお陰でパパも助かったんだから!」
「( ー̀ωー́)⁾⁾ウンウン」
子供達がオヤジに向かって意見する。
ここまで言ってもらっては、何もしないまま引き下がって子供達を失望させる訳にはいかない。祈ってばかりじゃないってところを見せてやろう!
「荒事は専門ではありませんが、困っている人に手を差し伸べるのも聖職者の務めです。
まずはその魔女に会いに行ってみましょう。
“ビエラ様と一緒”に!」
「Σ(゚д゚lll)!?」