5節
文字数 1,274文字
それにビエラ様も!?
どうしてここに!?部屋で祈ってたはずじゃ……!!」
「そんなのとっくに終わったわよ。
それで暇してたらビエラ様が高い所に行きたいって引っ張るから、一緒に探検してたらここに着いたの。」
「他人の家を勝手に探検するなよ!?」
「(ノ≧ڡ≦) テヘッ!」
それよりも早く追い返さなければ。
このままではバレる!
「スピカさん、さっきの”違う”ってどういう……」
「わーーーッ!!
なんでもないッ!な?
さっさと部屋に戻るぞ!」
慌てて部屋から追い出そうとするアークを払い退け、スピカははっきりと声を大にして言い放つ。
「星教の信じる神は、さっきの話に出ていた神気取りのクソ野郎とは違うって事です!」
「どうしてそう言い切れるんですか?」
「それは私が星教の司祭だからです!」
「星教の!?
じゃあスピカさん、貴方はもしかして……」
「もちろんッ!人間ですッ!!」
(言いよったッ!!?
ワシの今までの努力が……)
スピカが人間だと知ってショックを隠せないカノー。
しかし流石に今まで仲良しこよしでやっていた相手に対して、すぐ手の平を返す事は憚れるらしく冷静にスピカを諭す。
「話を聴いていたなら分かるでしょう!?
あなたの信じる神は卑劣で傲慢な、ただの侵略者です。
悪い事は言いません。すぐに信仰を捨てなさい。」
「断りますッ!!
さっきも言いましたよね?話に出て来たテラとかいう奴と、星教が信じる神様は別だって。」
そんな事はあり得ない。
星教が生まれたのは1000年前。鉄巨人がこの世界を去った直後のことだ。
世界中で神が畏怖され、その恐怖から逃れたい一心で数々の宗派が生まれた時期だ。
どう考えても星教が讃える神は、話に出た神と同一だとしか考えられない!
カノーのもっともな説得にもスピカは動じない。
「星教はずっと人々を守り続けてくれた神への感謝を忘れない為にできたものです。
さっきの話とは全く違います!」
「私が……嘘を言っていると……ッ!?」
「それも違います!
カノーさんの言う歴史は信じます。
でも、星教も信じる!!」
「そんな理屈、通じる訳が……!!」
「信じていいのは1つだけなんてルールはない!
私は信じたいものは、いくつだって信じる!」
スピカは真っ直ぐカノーの目を見つめながらメチャクチャな道理を堂々と返す。
その確固たる意思は皮肉にもカノーと似通ったものがあった。
「……もういいです。
これ以上何を言っても無駄でしょう……」
突如、部屋中の燭台の火が一斉に消えた。
部屋全体がガタガタと音を立て、入り口の扉がバタンッと閉じた。
空気が……熱を上げる!!
「あなた達が人間であると分かった以上、もう帰す訳にはいきません!!」
「待ってくれ、カノーッ!!
黙ってたのは悪かったが、ワシらは敵じゃ……」
「人間と語らう言葉なぞ無いッ!!」
カノーから凄まじい熱風が巻き起こり窓ガラスが一斉に割れた。
黒髪が火が付いたように灼光し、真っ暗だった部屋を照らし出す。
本気だ。
本気でスピカ達を帰さない気だ!!
「クソッ!!逃げるぞッ!!」