第96話
文字数 844文字
マンションに入ると、そのままエレベーターに乗り込み、水嶋は階数ボタンを押した。
「ねえ、今さら姉の部屋に何の用? しかもこんな時間に。辛い事を思い出すから、あまり入りたくないんだけど」明らかに機嫌を損ねている美穂子。
だが、このまま引くわけにはいかなかった。少なくともあのことを確かめるまでは。
「頼むから俺のいうことを聞いてくれ。どうしても確認したいことがあるんだ」
「だったらあなた一人で行けば?」と突き放してきたが、何度も頭を下げた結果、「早く済ませてよね」と、渋々了承してくれた。
エレベーターが七階に到着すると、水嶋は扉が開くやまっすぐに七〇七号室へと向かう。当然、鍵が閉められていて、水嶋はポケットからキーを取り出して鍵穴に刺した。高野内から受け取った、神林から手に入れた鍵だ。
鍵は何の抵抗もなく入った。さらに捻りを加えると、ガチャリと開錠する音が鳴った。
やはり、志穂の部屋の鍵で間違いなかったと確証を得た。
二人は中に入り、素早く鍵を下ろす。
相変わらず機嫌の悪い美穂子は、憮然としながら言った。
「今さら何を確かめるつもりなのよ。もしかして鍵の件? だったらもう用は済んだでしょう。勝手に入ったりして、誰かに見つかったらどうするつもり?」
それはこっちのセリフだ。この前侵入した時には、いくら注意をしても聞かなかったくせに。今さら誰の口が言っているのだろうと、顔を歪めずにはいられない。
すぐさまキッチンに入り、ひと通り見廻す。ある物を視界にとらえてから、水嶋はおもむろに椅子を引くと、どっしりと腰かけた。
「確認だけど、この部屋に入ったのは、この前俺と一緒に来たのが初めてだったんだよな?」
何を疑っているのよと、美穂子はぶすくれた表情になった。いいから答えてと急かすと、もちろんよと首を縦に振った。
目を伏せながらたっぷりと時間をかけて深呼吸をすると、意を決して、美穂子に向き直り、瞳をじっと見据えた。
「……君が黒幕だったんだな」
美穂子の瞳は、瞬時にその色を変えた……。
「ねえ、今さら姉の部屋に何の用? しかもこんな時間に。辛い事を思い出すから、あまり入りたくないんだけど」明らかに機嫌を損ねている美穂子。
だが、このまま引くわけにはいかなかった。少なくともあのことを確かめるまでは。
「頼むから俺のいうことを聞いてくれ。どうしても確認したいことがあるんだ」
「だったらあなた一人で行けば?」と突き放してきたが、何度も頭を下げた結果、「早く済ませてよね」と、渋々了承してくれた。
エレベーターが七階に到着すると、水嶋は扉が開くやまっすぐに七〇七号室へと向かう。当然、鍵が閉められていて、水嶋はポケットからキーを取り出して鍵穴に刺した。高野内から受け取った、神林から手に入れた鍵だ。
鍵は何の抵抗もなく入った。さらに捻りを加えると、ガチャリと開錠する音が鳴った。
やはり、志穂の部屋の鍵で間違いなかったと確証を得た。
二人は中に入り、素早く鍵を下ろす。
相変わらず機嫌の悪い美穂子は、憮然としながら言った。
「今さら何を確かめるつもりなのよ。もしかして鍵の件? だったらもう用は済んだでしょう。勝手に入ったりして、誰かに見つかったらどうするつもり?」
それはこっちのセリフだ。この前侵入した時には、いくら注意をしても聞かなかったくせに。今さら誰の口が言っているのだろうと、顔を歪めずにはいられない。
すぐさまキッチンに入り、ひと通り見廻す。ある物を視界にとらえてから、水嶋はおもむろに椅子を引くと、どっしりと腰かけた。
「確認だけど、この部屋に入ったのは、この前俺と一緒に来たのが初めてだったんだよな?」
何を疑っているのよと、美穂子はぶすくれた表情になった。いいから答えてと急かすと、もちろんよと首を縦に振った。
目を伏せながらたっぷりと時間をかけて深呼吸をすると、意を決して、美穂子に向き直り、瞳をじっと見据えた。
「……君が黒幕だったんだな」
美穂子の瞳は、瞬時にその色を変えた……。