第71話
文字数 581文字
二人はそのままの体制で、じっと動かずに扉を凝視していると、やがて神林が再び姿を現した。時間にして五分も経っていない。
このままでは鉢合わせしそうなので通路を逆走し、エレベーターホールの前を通り過ぎ、階段の陰に身を隠した。緊張で足を震わせながら耳を澄ませると、靴音が迫り、エレベーターの前で止まった。
その後、チンという音が鳴って神林が乗り込んだ様子で、しばらく待ってから顔を出すと、エレベーターホールに人影は無かった。
階数表示のランプを確認すると、下に降りていくのが判る。
「神林は何の目的で公子さんの部屋に来たんだろう?」水嶋は疑問を口にした。
「判らないわ。だけど嫌な予感がするの。とにかく私たちも行ってみましょう」
部屋の前に向かうと、美穂子はまたもピッキングの作業に入った。そこで水嶋は、ふと思った。
「なあ、もし開錠したとしても、中からチェーンがしてあったら、意味がないんじゃないか?」
「その時は決まってるじゃない」
「決まってる?」
「すぐに逃げるしかないわね!」
当然のように答えると、美穂子は素早く棒を動かし始め、今度もあっけなく開錠した。すっかり手慣れたもので、おそらく三十秒もかかっていない。これでは、直ぐにでもプロの空き巣になれるだろうと余計な心配をした。
だが、このあと第三の死体を目にすることになろうとは、水嶋は予想だにしていなかった……。
このままでは鉢合わせしそうなので通路を逆走し、エレベーターホールの前を通り過ぎ、階段の陰に身を隠した。緊張で足を震わせながら耳を澄ませると、靴音が迫り、エレベーターの前で止まった。
その後、チンという音が鳴って神林が乗り込んだ様子で、しばらく待ってから顔を出すと、エレベーターホールに人影は無かった。
階数表示のランプを確認すると、下に降りていくのが判る。
「神林は何の目的で公子さんの部屋に来たんだろう?」水嶋は疑問を口にした。
「判らないわ。だけど嫌な予感がするの。とにかく私たちも行ってみましょう」
部屋の前に向かうと、美穂子はまたもピッキングの作業に入った。そこで水嶋は、ふと思った。
「なあ、もし開錠したとしても、中からチェーンがしてあったら、意味がないんじゃないか?」
「その時は決まってるじゃない」
「決まってる?」
「すぐに逃げるしかないわね!」
当然のように答えると、美穂子は素早く棒を動かし始め、今度もあっけなく開錠した。すっかり手慣れたもので、おそらく三十秒もかかっていない。これでは、直ぐにでもプロの空き巣になれるだろうと余計な心配をした。
だが、このあと第三の死体を目にすることになろうとは、水嶋は予想だにしていなかった……。