第3話

文字数 331文字

 廊下から、また男の声が聞こえてきた。「占いなんて信じる奴があるか! くだらない。だいたい俺はな……」どうやら志穂を叱りつけているようだった。
 しかし、最後に五千円札を受け取った時の感覚が頭から離れない。もちろん、柔らかくて程よい感触だったことも否定しないが、それ以上に気になるのが、脳裏に浮かんだあの言葉だった。

 『たすけて』

 その四文字に間違いはない。彼女が救いを求めているのは間違いないが、それが何を示すのかまでは、見当がつかない。この時ほど、水嶋は本当の占い師でないことを悔やんだ瞬間は無かった。
 胸の奥に刺さった棘が無性に気になるものの、何か出来るわけもない。せいぜい彼女の幸運を祈るのが関の山だった。

 彼女の死を知ったのは、その翌日のことだった……。
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