第49話

文字数 401文字

 帰り際、よろしくお願いしますと握手をすると、『よっかでか』と浮かんだ。料金は日割りなので、おそらく四日で片付けて、そのくせ一週間分の料金を請求しようという算段なのだろう。
 そうは問屋が卸さないと、「料金は一週間分払いますから、見つけ次第、すぐに報告してください」と申し出た。
「……承知しました。任せてください」探偵の声は微妙に上ずっていた。タイミングの良すぎる水嶋の発言に、面食らったに違いない。
 さらに茶目っ気を出したくなった水嶋は、ダメ押しとばかりにこう言った。
「そういえば大野城エイラさんの握手会、どうでしたか?」
 思った通り、高野内の表情はみるみるうちに蒼ざめていき、口をパクパクさせながら、何かを喋ろうとしている。だが、吐息が漏れるばかりで、適当な言葉が見つからないらしく、口から何も出せないでいた。
 軽く靴を鳴らしながら、密かにガッツポーズをした水嶋は、意気揚々と探偵事務所の扉を閉めた。
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