第97話
文字数 679文字
「なに馬鹿な事を言っているの? 犯人はやよいさんだったんでしょう? 冗談はやめて。事件はもう終わっているのよ」
まさか自分が疑われているなんて思いもしなかったのだろう。突然の指摘に美穂子は動揺を隠せないでいた。
彼女は半笑いしながらも、水嶋のただならない気配を察知したのか、次第に苦悶の表情を浮かべながら、対面の椅子に腰を落とす。
再びゲラゲラと笑い出し、冗談でしょうと笑顔を見せた。しかし、その瞳の奥は笑ってなどいない。
「じゃあ、手を握らせてくれないか。もし、君が無実なのであれば、何の問題もないだろう?」
美穂子は頑なにそれを拒む。それこそが何よりの証拠だった。
だが、しばらくしてから、意外にも素直に右手を差しだしてきた。だが、彼女の顔は余裕に満ち溢れているように見える。
もしかして推理が間違っているのではないか、余計な事を言ってしまったのかと後悔しかけたが、それでも正しいと確信していた。どう考えても、全ての犯行は美穂子であること以外考えられない。
彼女の差し出す右手をそっと握り、事件への関与をひとつひとつ順に問いただした。だが、彼女の返事は全てノーで、『ほんとうよ』のメッセージしか浮かばない。
つまり、どんな質問をしようが、心の中で“本当よ”と思い続けているのだ。つまり美穂子に一本取られた形だった。まるで、彼女に主導権を握られた様で、水嶋はげんなりとなった。
少し遠回りになるが、こうなったら正攻法で行くしかない。
水嶋は気持ちを切り替えるために、煙草を吸って良いか申し出た。どうせ心を読んでも無意味なのだから、せめて煙を肺に入れたかった。
まさか自分が疑われているなんて思いもしなかったのだろう。突然の指摘に美穂子は動揺を隠せないでいた。
彼女は半笑いしながらも、水嶋のただならない気配を察知したのか、次第に苦悶の表情を浮かべながら、対面の椅子に腰を落とす。
再びゲラゲラと笑い出し、冗談でしょうと笑顔を見せた。しかし、その瞳の奥は笑ってなどいない。
「じゃあ、手を握らせてくれないか。もし、君が無実なのであれば、何の問題もないだろう?」
美穂子は頑なにそれを拒む。それこそが何よりの証拠だった。
だが、しばらくしてから、意外にも素直に右手を差しだしてきた。だが、彼女の顔は余裕に満ち溢れているように見える。
もしかして推理が間違っているのではないか、余計な事を言ってしまったのかと後悔しかけたが、それでも正しいと確信していた。どう考えても、全ての犯行は美穂子であること以外考えられない。
彼女の差し出す右手をそっと握り、事件への関与をひとつひとつ順に問いただした。だが、彼女の返事は全てノーで、『ほんとうよ』のメッセージしか浮かばない。
つまり、どんな質問をしようが、心の中で“本当よ”と思い続けているのだ。つまり美穂子に一本取られた形だった。まるで、彼女に主導権を握られた様で、水嶋はげんなりとなった。
少し遠回りになるが、こうなったら正攻法で行くしかない。
水嶋は気持ちを切り替えるために、煙草を吸って良いか申し出た。どうせ心を読んでも無意味なのだから、せめて煙を肺に入れたかった。