第220話 ノギス・メギストス

文字数 656文字

「エリさん、何を作ってらっしゃるのですか?」
 ガレージでマホガニーの板を切断している、レオンと馬の合う元気娘。

「うン、ワタシもメシヤの影響で本の量が増えちゃってサ。棚を(こしら)えてるんだヨ」
 イスラエルでも拵えるのかは不明だ。

「取っ手も種類豊富ですね」
 本を収納するスペースの下に、引き出しをいくつか取り付ける設計だった。

「それなんだけド、取っ手を固定するビスが微妙に長いんだよネ」
 エリはのこぎりを()く手を止めた。

「板厚が20ミリでしたね。取っ手を付けるのなら24ミリほどのビスが良さそうです」
 レオンがビスの置かれた山を見留めた。

「多分大丈夫なんだろうけド、手持ちのビスを測ったら25ミリなんダ。ビスが余って飛び出ないか心配だヨ」
 エリは持っていた物差しで、ビスを測った。



「エリさん、どうやら心配は無さそうです」
 レオンはエリのビスを受け取った。

「学校で使うようなプラスチックの定規は、伸び縮みが激しいんです」
 レオンがノギスのジョーでビスを挟むと、メインスケールの24の目盛りに、バーニアスケールの0が、ぴたりと合わさっていた。

「ほんとダ! 板は鋼製のメジャーを使って測ったんだけド、ビスは小さいからなんとも思わずに定規を使ってたヨ」


 今回は棚の取っ手ビスであったが、その他のDIYにおいても、長さを誤ってビスが裏側に飛び出すことがある。デスクワークに話を移しても、そうした1ミリ程度の誤差から、切り貼り作業のミスが生まれかねない。

《そんなことは1ミリも思わない》と言われて測ったら、2ミリの余地があったりする。









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