第93話 グランモナルクに寄す、めでたいご帰国に際して

文字数 546文字

「メシヤくん!」
 鷹山が両腕を広げてメシヤを出迎えた。

「ただいま戻りました、鷹山さん」
 メシヤは旅の疲れを感じさせない。

「メシヤくん。君のいないあいだ、日本は大変だったよ。プロミネンスもいまだ猛威を振るっているし、オリンピック開催への抗議もやまない」
 鷹山はややくたびれた様子だった。

「はい。そのへんの状況は僕も海外から見ていました」
 メシヤはいつになく落ちついている。

(メシヤさまによる集団免疫も、ウイルスが変異すればまた1からやり直しという訳ですわね)
 レマは心のなかでつぶやいた。

架塔(かとう)、みなさんにお茶を」
 鷹山は秘書官の架塔リックに促した。

「かしこまりました、総理」
 彫りの深い架塔は、給湯室に消えて行った。

 話はぜんぜん始まらない。
 どうも鷹山は、なにか言いにくい要件を抱えているようだ。

 しばらくすると、架塔が戻ってきた。
「粗茶ですが」

 メシヤは珈琲もお茶に入るのかなと真面目に考えたが、鼻孔をくすぐるそれは、メシヤ好みの味であった。

 珈琲が会話を円滑にすることはある。場が和んだのを見て鷹山が切り出した。

「メシヤくん、ワシの椅子に座ってみる気はないかね?」
「ええーーー!!??」
 メシヤが椅子に座るくらいなら、とマジボケで返事しそうになる前に、同席したマリアが金切り声を上げた。



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