第177話 頭皮を磨くっきゃない

文字数 917文字

「メシヤさまはとても毛量が多いですわ」
 メシヤは逆立ちを好んでするので、頭皮の血行が良いのだろう。

「ホントホント! 艶もあるよネ!」
 エリは日常的にくるくる跳び回るが、体操選手には薄毛がいないという説もあるようだ。

「髪で悩んでいる人間をからかうのは良くないだろうが、どうすれば少しでも育毛出来るかについて語り合うのは有益だろうな」
 相手のコンプレックスに触れないようにするというのが昨今の風潮であるが、当の本人がそれを気にしているのなら、その抑圧された気持ちを解消できるような方向性に持って行きたいものだ。

「カラーリングとかパーマとかさ、美容師さんは薄毛に関係ないとは言ってくれるけど、なんか考えちゃうわ」
 ちなみに、マリアはイエローゴールド、裁紅谷姉妹はペリドット色の髪であるが、地毛である。

「マリアは美容院なんだね」
 それはそうだろう。

「あんた、床屋さんなの?」
 これが放送禁止用語に当たるのは疑問だ。

「そうだよ。昔っからなじみの床屋さん。髪技だよ」
 凄腕の理容師は、ハサミの音が違う。また、手数が多く、ためらいが無い。

「俺もさ、付き合いで何度か美容院に行ったことはあるんだが、どうもしっくり来ないんだ。理髪店ははっきりラインを出してサイドや襟足を整えてくれるんだが、美容院は切り様がラインをぼやかす感じで、さっぱりしたい俺には不向きだった」
 もちろん、イエスの行った店がたまたまそうだっただけで、お望み通りのヘアスタイルに仕上げてくれる美容院は、当たり前に存在する。

「へえ、なんだか良さそうね」
 マリアくらいの年頃の高校生が行きやすい店作りも、求められている。

「シャンプーブラシとかさ、ショッピングセンターに色々売ってるけど、僕は床屋さんとかに売ってる安いやつが合ってたし、お気に入りだよ。なにより気持ちいいし」
 スカルプブラシやシャンプーブラシをネット検索すると、高額な商品がズラズラと表示されるが、幸運は案外近くにあるものである。

「髪は頭皮の血行が命と言いますわ」
 それと、頭皮に溜まった汚れを落とすことも出来るのが利点だ。


 後日、メシヤの通う理髪店にレオンが訪れた。あはれなり、レオンはシャンプーブラシを見事手中に収めた。





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