第143話 走る走る俺たち
文字数 1,154文字
「全日本大学駅伝、このあたりを通るのですね」
レマは道路が規制されているのを見て、気付いたようだ。
「駒大が優勝したみたいね」
長距離は苦手のマリアだが、スポーツには関心がある。
「イエスもスポーツ推薦とかあるんじゃないの?」
「話はいくつかあるが、俺は国立に行きたいからな」
国立大学でもスポーツ推薦を行っているところはあるが、まだ少数だ。
「メシヤは長距離、得意なノ?」
エリが興味本位で聞く。
「ああ、僕はーー」
「こいつはね、速いときは速いけど、駄目なときは本当に駄目。一桁の順位の時もあれば、三桁の時もあったわ」
メシヤが話す前にマリアが割って入った。
メシヤの体調には、かなり波がある。
「サッカーをやってるから、持久力は欠かせないんだけど、なんか色々と試したいことがあってさ」
室内トレーニングでも、スタミナを付けることは可能だ。
「例のあれか?」
イエスもその実験に付き合わされたことがある。イエスは普通にしているだけで校内1、2位を争う実力の持ち主だ。
「腕の振り方なんだけどさ。たいていは肘を曲げて軽く前後に振るのが良いってされてるよね」
「あたしでもそうするわ」
メシヤはタスキをうまく渡せるだろうか。
「でもさ、長い距離を走ってるとどうしても単調になるって言うか、少しアクセントを変えた方がタイムもよくなると思うんだ。
「そう言われてみれば、ランナーを見ていると決して腕の振り方が終始同じというわけでは無いですわね。横に振っている場面もありますわ」
それもそのはず、平坦な道もあれば傾斜のキツイ区間もあるわけで、残りのスタミナも開始と終盤で当然違うのだから、体の操縦も応じて変えるのが相当である。
「だがな、お前のあれは本番では絶対にやらんぞ!」
メシヤのアレとは、飛脚走りである。だが、いまでは伝承も途絶えており、映像も残っていないので、推測するほか無い。
「飛脚がさ、長距離をごく短時間で走れたのってちゃんと理由があると思うんだよね。挟み箱を担いでいたから、手はおのずと固定されてたんじゃ無いかな。だからこれを現代のランナーが応用するなら、左手が前で右手が後ろで固定して走るってことさ。まあ左右どちらが前でもいいんだけど、左が前のほうが具合が良いかな」
とんだ珍説だ。
「お前、それだけじゃないだろう」
「まだあるの!?」
マリアもメシヤと長い付き合いだが、よく耐えている方だ。
「冬季オリンピックを見てて思いついたんだけどさ、スピードスケートって手を大きく振るじゃん? あれ、氷上じゃなくても陸上でも応用できそうだなと思って」
「ちょっと、エリちゃん。このバカに何とか言ってやってよ」
エリは考え込んでいる。スタートの構えを見せたかと思うと、左手を前に、右手を後ろに固めて走り出し、あっという間に姿が見えなくなった。
レマは道路が規制されているのを見て、気付いたようだ。
「駒大が優勝したみたいね」
長距離は苦手のマリアだが、スポーツには関心がある。
「イエスもスポーツ推薦とかあるんじゃないの?」
「話はいくつかあるが、俺は国立に行きたいからな」
国立大学でもスポーツ推薦を行っているところはあるが、まだ少数だ。
「メシヤは長距離、得意なノ?」
エリが興味本位で聞く。
「ああ、僕はーー」
「こいつはね、速いときは速いけど、駄目なときは本当に駄目。一桁の順位の時もあれば、三桁の時もあったわ」
メシヤが話す前にマリアが割って入った。
メシヤの体調には、かなり波がある。
「サッカーをやってるから、持久力は欠かせないんだけど、なんか色々と試したいことがあってさ」
室内トレーニングでも、スタミナを付けることは可能だ。
「例のあれか?」
イエスもその実験に付き合わされたことがある。イエスは普通にしているだけで校内1、2位を争う実力の持ち主だ。
「腕の振り方なんだけどさ。たいていは肘を曲げて軽く前後に振るのが良いってされてるよね」
「あたしでもそうするわ」
メシヤはタスキをうまく渡せるだろうか。
「でもさ、長い距離を走ってるとどうしても単調になるって言うか、少しアクセントを変えた方がタイムもよくなると思うんだ。
「そう言われてみれば、ランナーを見ていると決して腕の振り方が終始同じというわけでは無いですわね。横に振っている場面もありますわ」
それもそのはず、平坦な道もあれば傾斜のキツイ区間もあるわけで、残りのスタミナも開始と終盤で当然違うのだから、体の操縦も応じて変えるのが相当である。
「だがな、お前のあれは本番では絶対にやらんぞ!」
メシヤのアレとは、飛脚走りである。だが、いまでは伝承も途絶えており、映像も残っていないので、推測するほか無い。
「飛脚がさ、長距離をごく短時間で走れたのってちゃんと理由があると思うんだよね。挟み箱を担いでいたから、手はおのずと固定されてたんじゃ無いかな。だからこれを現代のランナーが応用するなら、左手が前で右手が後ろで固定して走るってことさ。まあ左右どちらが前でもいいんだけど、左が前のほうが具合が良いかな」
とんだ珍説だ。
「お前、それだけじゃないだろう」
「まだあるの!?」
マリアもメシヤと長い付き合いだが、よく耐えている方だ。
「冬季オリンピックを見てて思いついたんだけどさ、スピードスケートって手を大きく振るじゃん? あれ、氷上じゃなくても陸上でも応用できそうだなと思って」
「ちょっと、エリちゃん。このバカに何とか言ってやってよ」
エリは考え込んでいる。スタートの構えを見せたかと思うと、左手を前に、右手を後ろに固めて走り出し、あっという間に姿が見えなくなった。