第130話 gift of the gab (弁舌の才)

文字数 755文字

「鷹山総理、演説が巧みよね」
 国会討論を見ながら、マリアが感想を述べる。

「代表選の時も4人候補者がいたが、鷹山さんが頭抜(ずぬ)けていたな」
 イエスが数年前を振り返る。

「政治家っていうと、相手の言うことをいかに否定して優位に立つかみたいなところがあるけど、鷹山さんは違うんだよね」
 メシヤの人物評も的確だ。

「前政権では、都合の悪い質問をされると、はぐらかすか一切受け付けなくなる場面をよく見掛けた」
「そうだったわ。でも鷹山さんは相手の発言をじっくり消化して言葉を返している印象だわ。たとえ痛いところを突かれたとしても」
 マリアも政治には高い関心がある。

「自分の話を上手く伝えるよりも、相手の話を吟味して理解する方がよっぽど難しいんだよね。普通なら相手の話を聞くより自分の話をしたい人が多いしさ」
 メシヤの言うように、他人との会話ではどんな話題が飛び出すか分からないので、その対応は入り組んでくる。

「相手の言葉を拾ってそれにふさわしい自分の意見を返してっていうタスクは、思いのほか面倒でエネルギーを消費するからな」
 イエスの心友は、これがごく自然に出来ている。

「いまでこそ電話恐怖症なんて言葉があるけど、自分から掛ける電話はしやすくて、掛かってきた電話は構えちゃうって話は分かるわね」
 デジタル世代のマリアは、まだ電話も使う方なのだが。

「鷹山さんは党の論理で動いてる訳じゃないんだよな。所属は違えど日本を良くする思いでいっぱいだから、誰とでも発展した議論が出来る」
 先の衆院選で圧勝したのも、時代の要請だろう。

「雑談でもそんな気持ちでいたいわね。せっかく縁あって話す機会が出来たんだから」
 鷹山のスピーチには、こういうものもある。"世界を変えようとする前に、目の前の身近な人を大切にしてください"と。





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み