第133話 勝手にしろと叫んで吠える

文字数 763文字

「こんにちは、真倉さん!」
 メシヤたちの乗る車は、みなメカドック真倉にお世話になっている。


「よお、きょうはどうした」
 整備の手を止めて対応する真倉。

「はい、僕たちが遠出するときに使ってるワーゲンバスなんですけど、タイヤの色を変えたいなあって思って」
「ふむ、カラータイヤか」
 ミニ四駆などではおなじみのカラータイヤだが、現実の車となるとはてさて。

「あんた色ネタが多いわね」
 マリアがこう言うのも無理は無い。共感覚の持ち主であるメシヤは、カラーリングにこだわる。

「結論から言うとな、カラータイヤはすでにあるんだよ」
 80年代に、自転車でカラータイヤがブームになったことがある。ただ、ブームは長く続かなかった。タイヤに強度を出すためには、カーボンブラックを使わなければならない。必然的に黒いタイヤが主流になった。

「やはり難しいですか」
 肩を落とすメシヤ。

「だがな、いまホワイトカーボンってのがあって、カーボンブラックの割合を減らすことも考えられている。だからこのまま研究が進めば、タイヤの強度とドレスアップを両立させることが出来るぜ」
 真倉は頼もしい兄貴分だ。

「それは楽しみですね!」
 メシヤは大喜びだ。

「あら?」
 マリアがガレージの奥に目をやる。

「これ、タイヤに色が付いていますね!」
 なんだかんだ言って、マリアも車のドレスアップをやりたいほうだ。

「ああ、サイドウォールだけな。アクリル性着色料で印刷するんだよ」
「うわ、これ僕もやりたいです!」

「ちょっと待ってろよ」
 真倉が色見本表を取り出した。
メシヤとマリアは好奇心旺盛の10歳児のような目をしていた。似たもの同士である。

「あたしは513番のローズにするわ!」
「僕は538番のセラドンにします!」

「あいよ、待ってておくんな」
 真倉がクリムゾンレッドのペンで、色見本に丸を付けた。



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