第144話 微に入る細を穿つ

文字数 1,301文字

 いつもの五人組で、ホームセンター"Mr.ハンマー"へ買い物に来ている。

「レジ袋有料ってなんとかならないかしら」
 商品を包まずに出口をでると、万引きに間違えられかねない。

「悪いことしてませんよアピールで、レシートを片手に持たないといけないしなあ」
 エコバッグは常備しているメシヤなのだが。

「レジ袋がどれくらい環境負荷があるのか、分からないままだよな」
 イエスは大量に買い込むので、不便をこうむっている。

「そもそも、レジ袋代のお金が何に使われているのか、アナウンスがありませんわ」
 国民の半数が5円のレジ袋を購入するとしたら、一日2億5000万円。月に75億。
年に900億円という莫大な金額が動く。

「食料品とかにあらかじめレジ袋の金額を盛り込んでくれればいいと思うナ」
 エリの言う通りだろう。

店員「レジ袋要りますか?」 客「え?」
店員「レジ袋です」 客「ああ、ください」
店員「大きいのと小さいのがありますが」 客「小さいので良いです」
このやりとりだけでコストはゆうに5円を超えている。

「レジ袋の代わりとなるものが模索されてるけど、なかなか、ね。紙袋は20円とかだし」
 高校生にとっての20円はデカい。

 メシヤたちがレジに並ぼうとすると、バックリボンフレアコートを身にまとった、エレガントな女性が目に入った。

「オブライエンさん!」
「あら、メシヤくんたち。みなさんおそろいで」
 オブライエンが基礎研究に使う資材や道具も、あるていどはここで揃う。

「オブライエンさんが使うものは、もっと特殊なものかと思っていました」
 当然の疑問だろう。

「わたしは加工するのも好きなの。理論だけでは物理学者は務まらないものよ」
 ハイパーループを世界中に張り巡らさせた、開発者の言葉は拝聴したい。

 オブライエンとメシヤたちは会計を済ませ、サッカー台に並んだ。

「どうしてもレジ袋は必要になりますよね」
 メシヤが荷詰め作業を始めた。

「オブライエン博士。さっきもメシヤたちと話してたんですけど、なにか良い方法はないでしょうか? レジ袋代5円を払うのが惜しくて、裸のままで商品を持ち歩いている状態なので」
 マリアが訊ねた。

「そうねえ」
 ジェニーは購入したキムワイプを手にして考え込んだ。

「光分解性プラスチックというものがあるのだけれど」
 読んで字のごとく、光に当たると分解されるプラスチックのことである。

「聞いたことがあります。生分解性プラスチックのほうが有名ですが、光分解性プラスチックとともに、まだまだコスト面で使いづらいようですね」
 イエスも科学誌などには一応目を通している。

「それが広まったラ、いちいちレジで面倒なやりとりもなくなるのにネ!」
 エリも商品をむき出しのまま持ちだしている状況だ。

「オブライエン博士のところで、こちらの研究は進められないでしょうか?」
 レマの目は真剣そのものであった。

「あなたたちの熱意には負けたわ。ここだけの話ではなく、日本国民、世界中の人々にも関わってくることですし、ちょっと動いてみるわね」

「「ありがとうございます!」」
 5人がオブライエンの後ろ姿に向かって、深々と一礼をした。





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