第169話 象を象る

文字数 1,086文字

「キリンさんが好きだけど、象さんはもっと好きなんだ」
 どうぶつクッキーを頬張るメシヤ。

「メシヤんちの書庫って、動物図鑑とか植物図鑑とかけっこう取り揃えてあるわね」
 マリアは猫科の動物が似合う。

「メシヤさまのお使いになられているものは、そうした自然のモノを(かたど)ったものが多いですわ」
 無機物にも、かような方法で、生命が宿る。

「ちょっと子供っぽいけどネ!」
 と、見るからに子供のエリが突っ込む。

「雑貨屋とか一緒に行くと、まあ製作者のトラップにものの見事に引っかかってるよ、こいつは」
 ただの四角いだけのものやのっぺりとしたものより、カラフルで何かを象り、あしらったものにしか興味が行かない本編の主人公。

「でもさ、これって、そうじゃない?」
 すこし分かりにくい日本語だ。

「乗り物の形の小物や、恐竜グッズとかね。小学校入学前の子供が買い与えられるやつじゃない」
 マリアが噴き出しそうだ。

「わたくしはメシヤさまのお気持ちがよく分かりますわ。食べ物でもイチゴの形をしたイチゴ味のグミや、柿の形をした柿スイーツなど、とても手が込んでいると思います」
 食べ物で例を出されると、共感者も増えそうだ。

「そうそう! 鈴カステラとかさ、正直味はチープなのかも知れないけど、普通の長細いカステラより僕はなんか好きだな!」
 ピラミッドが有名だが、美麗な構造物が生み出す未知なるパワー、特殊な図形がもたらす神秘的な作用、これらは非科学だと突っぱねず、真面目に研究する余地が大いにありそうだ。

「それで言ったら、猫モチーフはほんとに増えたわね。マスコットキャラにされる動物ってある程度決まってるけど、これは根強いわ」
 他には、ネズミ・ウサギ・ペンギンあたりがよく採用される。犬は例に出すまでも無い。

「花ガラの小物や衣類は昔から人気ですが、花の形そのもののお皿や小物入れなどが出て来ていますわ。とてもユニークですし、面白い試みではないかと」
 レマも日本のクラフト職人たちの多彩さに驚かされている。

「メシヤのナゴブロックの原案っテ、ワシリイ宇宙センターだけじゃ無かったよネ。他にもかっこいいのを見掛けたヨ」
 メシヤはフリーハンドで図面を描くのが好きだが、そのどれかを見つけたのだろう。

「あったあった。卍文字の形をした家とかな。鈎の部分の先端にそれぞれ入り口があるんだ。空間を無駄にした住み心地最悪のもったいない造りだ」
 カンフー映画に出て来そうな建物である。

「あ、あんたそれ美味しそうじゃない!」
「うん、マリアたちにもあげるよ」
 鈴カステラとは違うが、新宮名物・鈴焼である。
マリアたちは鈴では無く、喉を鳴らした。




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