第91話 愛は魔術師
文字数 1,131文字
「ふ~、やっと帰って来れたぁ!」
北伊勢駅に到着し、メシヤはホッと息をつく。
ハイパーループには列車のように固有の名前が付いているのだが、
メシヤたちが乗る専用車は「ミカエルの翼」と命名されていた。
どこにも宿泊せず乗り続けるだけなら、ハイパーループで世界一周をするのに要する時間は、ざっと一週間といったところだ。地上ルートでこのスピードに達したのは、驚異的な進歩である。
「メシヤ、よく頑張ったわね」
めずらしくマリアがねぎらいの言葉を掛ける。
「そうだな、なかなか出来ることじゃない」
イエスも続く。
「そう? ミカエルの翼に乗ってただけだけどね」
メシヤは、率直な感想を述べた。
「いえ、このハイパーループはメシヤさまの発案と聞いております。そして、そのアイデアを読んだ、かのオブライエン博士が、理論を練り上げて完成させたのだと」
レマは、レベルCクラスの情報を開陳した。
「メシヤ、胸張っていいんだヨ!」
エリもご機嫌だ。
「ハイパーループの構造とか、そこまで詳しく設計図を考えた訳じゃないけど、それもこれも鷹山さんの力が大きいよ」
メシヤはあくまでも自分ひとりの力では無いと言いたげだ。
「ところでさ、出発してから1ヶ月くらいだと思うけど、北伊勢市内の様子がなんか随分変わってるね」
メシヤはあたりをキョロキョロする。
「そらそうよ。なんたってここらへん一帯は新首都になったんだから、目下建設ラッシュ進行中よ」
「ここいらだけじゃないぜ。ハイパーループが敷設されて、各路線沿いや駅を中心に、どんどん街が変わっていってる」
イエスも実家の仕事柄、世情に詳しい。
「素朴なお話なのですが・・・」
レマが小さく手を挙げる。
「うん? なんだい、レマ」
メシヤが促す。
「はい。以前は新しく出来る建物といったら、ドラッグストアがすごく多かったんです。それと介護施設ですね」
それを聞いて、一同がうなずく。
「ところが、最近ではそうした傾向も収まって来て、ホームセンターや専門店がとても増えているという印象です」
レマの言うとおりであった。
「みんな少しづつ元気になってきテ、自分で何かを作ってみようって意識が芽生えてきたんじゃないかナ?」
エリの言うように、世間の人たちのスマホに向かう時間の減少が、このデータを裏付けていた。
「プロミネンスウイルスさえなければ、もっと色んな国の人が行き来できるのにね。もったいないわ」
マリアがため息をつく。
「プロミネンスのほとぼりが冷めるまでのあいだを、急激な変化に対応する準備期間と捉えればいいんじゃないかな。仕事とかライフスタイルまでもがガラッと変わる訳だしさ」
メシヤがなだめるように言うと、十九川工務店の黄色いワーゲンバスが、にぎやかに到着した。
北伊勢駅に到着し、メシヤはホッと息をつく。
ハイパーループには列車のように固有の名前が付いているのだが、
メシヤたちが乗る専用車は「ミカエルの翼」と命名されていた。
どこにも宿泊せず乗り続けるだけなら、ハイパーループで世界一周をするのに要する時間は、ざっと一週間といったところだ。地上ルートでこのスピードに達したのは、驚異的な進歩である。
「メシヤ、よく頑張ったわね」
めずらしくマリアがねぎらいの言葉を掛ける。
「そうだな、なかなか出来ることじゃない」
イエスも続く。
「そう? ミカエルの翼に乗ってただけだけどね」
メシヤは、率直な感想を述べた。
「いえ、このハイパーループはメシヤさまの発案と聞いております。そして、そのアイデアを読んだ、かのオブライエン博士が、理論を練り上げて完成させたのだと」
レマは、レベルCクラスの情報を開陳した。
「メシヤ、胸張っていいんだヨ!」
エリもご機嫌だ。
「ハイパーループの構造とか、そこまで詳しく設計図を考えた訳じゃないけど、それもこれも鷹山さんの力が大きいよ」
メシヤはあくまでも自分ひとりの力では無いと言いたげだ。
「ところでさ、出発してから1ヶ月くらいだと思うけど、北伊勢市内の様子がなんか随分変わってるね」
メシヤはあたりをキョロキョロする。
「そらそうよ。なんたってここらへん一帯は新首都になったんだから、目下建設ラッシュ進行中よ」
「ここいらだけじゃないぜ。ハイパーループが敷設されて、各路線沿いや駅を中心に、どんどん街が変わっていってる」
イエスも実家の仕事柄、世情に詳しい。
「素朴なお話なのですが・・・」
レマが小さく手を挙げる。
「うん? なんだい、レマ」
メシヤが促す。
「はい。以前は新しく出来る建物といったら、ドラッグストアがすごく多かったんです。それと介護施設ですね」
それを聞いて、一同がうなずく。
「ところが、最近ではそうした傾向も収まって来て、ホームセンターや専門店がとても増えているという印象です」
レマの言うとおりであった。
「みんな少しづつ元気になってきテ、自分で何かを作ってみようって意識が芽生えてきたんじゃないかナ?」
エリの言うように、世間の人たちのスマホに向かう時間の減少が、このデータを裏付けていた。
「プロミネンスウイルスさえなければ、もっと色んな国の人が行き来できるのにね。もったいないわ」
マリアがため息をつく。
「プロミネンスのほとぼりが冷めるまでのあいだを、急激な変化に対応する準備期間と捉えればいいんじゃないかな。仕事とかライフスタイルまでもがガラッと変わる訳だしさ」
メシヤがなだめるように言うと、十九川工務店の黄色いワーゲンバスが、にぎやかに到着した。