第170話 タイム防寒

文字数 890文字

「日本の冬は寒すぎるヨ~!」
 任務を終えて、めし屋フジワラまで訪れたエリ。どこから来たのかご苦労さんである。

「これからどこへ行くの? おつかれさんだね」
 メシヤは特別なスープを用意していた。

「足先も冷えてちょっと堪えますね」
 レマも遅れて到着した。どうしたことだろう。今年は例年に比べて降雪量が多い。

「僕もさ、足の指が冷えすぎて痒くなるくらいだったんだよ。でも靴下カイロを貼ったらこれが具合がいいんだ」
 靴下を履いて、そのつま先裏部分に貼るタイプである。これだけだと不格好なので、メシヤはさらに靴下を重ね履きしている。

 興味を持った裁紅谷姉妹が、メシヤからもらった靴下カイロをさっそく装着した。
「ア~ッ、これいい~ッ!」

 揉まずに貼るだけで温かくなる。ただし、長時間貼り続けると低温やけどになるおそれがあるので、違和感を覚えたらすぐ()()がすことだ。

「メシヤさま。お恥ずかしい話なのですが、冬場はお腹を冷やしてしまって体調が優れないことがあるんです。エージェントとして失格なのですが・・・」
 レマが険しい表情をしている。

「一緒、一緒。僕の場合はお腹をくだしやすくなるんだよ。だから、服の上からカイロを貼って温めてるよ」
 臍下へそしたから指三本分下のところに、関元穴(かんげんけつ)という重要なツボがある。なお、脱いだときは誤って洗濯してしまわないように、気をつけられたし。睡眠時も、決して使ってはならない。

「レマ、これはどっちになるんだっケ?」
「ええと?」
 裁紅谷姉妹は、カイロのゴミの分別について話している。

「自治体によって燃やすところもあるけど、北伊勢市では不燃ゴミの扱いだよ」
 カイロには鉄粉が入っている。

 ほどなくして、裁紅谷姉妹は、めし屋フジワラを後にした。

「お姉さま。わたくし達がメシヤさまを助けるのではなく、わたくし達がメシヤさまに助けられていますね」
「確かにネ。でもこの一年デ、身元不明の人間が北伊勢近辺をうろうろしだしてるでショ? ワタシ達がやらないといけないことハ、まだまだあるネ」

 雪の降る街を、裁紅谷姉妹が通り過ぎてゆく。
 この哀しみを、この哀しみを、いつの日かほぐさん。




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