第62話 スターゲイト

文字数 909文字

「異世界という言葉がありますが―――」
「おっ、興味深いね」
「あのような世界もいちおう地球とは時間的・空間的に地続きのところにあるのです。宇宙 
空間を隔てているのに地続きというのも変な話なのですが」

「う~ん、たとえば漫画の世界と現実世界は相容れないものだけど、異世界は物理的な時空 
間を移動しさえすればたどり着けるってことかな?」
「さようです。もしかすると、漫画のような異世界もあるかも知れませんよ」
「で、こないだレオンくんが言ってた話だけど」
「信じられませんか?」

 メシヤはボウスハイトと対峙した日のことを思い出す。
「マナの聖杯を手に入れたことによって、第三の剣、光瑤剣(こうようけん)を生み出すことが出来た。レオンくんの言葉では破軍(はぐん)(つるぎ)だったかな?」
「そうです。そして、このエメラルド・タブレットを探し出したことによって、メシヤくん 
の臥龍剣・鳳雛剣のエネルギーキャパもほぼ無尽蔵となったのです」
「ほぼ無尽蔵ってのが引っかかるけど、まああれだけのエネルギーを吸収できるなら無尽蔵と言っても過言じゃないね」

「はい。鳳雛剣に太陽の火力を。臥龍剣に地球の水力を」
「でも、そんなことしたら人類滅亡だね」
「心配には及びません。太陽の総熱量は3.85×10^26 j/s 地球の総水量は13.5億立法キロ 
メートルほどですが、昨今の地球温暖化・海面上昇の影響分だけ吸い上げれば事足ります」
「ああ、それなら地球にとっても環境が改善されて言うこと無いね」
「地球の双子星での不具合がそういうところに(ひずみ)としてあらわれてきているのです。

「そこに僕たちが行くんだね」
「はい。そこは、いまではデス・ヘヴンと呼ばれています」
「僕たちがいなくなるあいだ、学校が気になるね」
「そちらも問題ありません。破軍の剣が銀河間航行を可能にするスターゲイトを生み出すのですが、エネルギーが膨大すぎて時空間を(ゆが)めてしまうのです。メシヤくんたちが8月8日の午後8時に出発したとしたら、そのわずか一時間後に戻ってくることも可能です。向こうで数年過ごしたとしてもね」
「デス・ヘヴンで何が起こったの?」

 一瞬、重い空気が張り詰めたあと、レオンは答えた。
「徹底的なまでの破壊と、殺戮です」




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