第111話 金髪のジェニー

文字数 923文字

「いらっしゃいませ」
 メシヤは、以前どこかで会ったのかなと記憶を辿った。

「驚くのも無理は無いな」
 ダニエルが冷水を口に含む。

「あ、お兄ちゃん! テレビで話題になってた、オブライエン博士じゃない?」
 マナが先に思い出した。

「えー!」
 前から憧れていた人物だけに、メシヤは驚きと喜びを隠しきれなかった。
(でも、なんで僕のことを知ってるんだろう? そうか、レオン君が言ってたな。僕のブログを読んでるって)

「立ち話もなんですから、お好きな席にお掛けください」
 マナが気を利かせた。

「あら、可愛いウェイトレスさんね」
 ジェニーは、心からの笑みを見せた。

「ありがとうございます! そちらのお方は?」
「僕はコーラーだ。彼女の世話係だよ」
 コーラーは席に着くと、ペプシを頼んだ。

「なんにしようかしら」
 メニュー表を眺めるジェニー。

「きょうは暑いですから、天ぷらコロきしめんはいかがでしょう?」
 メシヤは麺類の中でもきしめんの序列が高いのだが、いまいち人気が無いことに不満を抱いている。
「あら、メシヤくんのオススメならそれにするわ」
 ジェニーにも苦手な食べ物はあるが、食べたことのないものに挑戦する心構えは持ち合わせていた。

 先にオーダーしていたトンテキが届いた。
「うまいじゃないか」
 めずらしくダニエルが褒めた。

「ダニー、あなたの料理も美味しそうね」
 博士は意外に食いっ気がある。頭脳労働者は、エネルギーの消費も激しい。

「ダニエルさんとオブライエンさんが知り合いだなんて、悪いことに巻き込まれなきゃいいけど」
 メシヤが牽制した。

「言うじゃないか。お前は知らないと思うが、オブライエン博士はロックフォーゲル大統領とも懇意なんだぜ」

「そうなの。同じキャンパスで学んでいたんだけど、彼は幼くして入学していたから、それは目立っていたわ」

「さすがボウスハイトくんだなあ。あれ、でもそれはオブライエンさんも同じですよね?」
「まあ、ね。わたしとボウスハイトは一世代離れてるんだけどね」
 何歳差かまで聞くほど、メシヤも野暮でなかった。

 そうこうしている間に調理が終わった。
ジェニーが慣れた手つきで麵をすすると、顔をほころばせた。
「ニューヨークにも、きしめん店を出してほしいわ!」




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