第184話 Golden Crown

文字数 940文字

「クラウンの金色って確か発売されたハズなんだけど、見たこと無いね」
 メシヤは金ぴか好みである。

「車に限らずだけど、ゴールド色の小物とか増えたわよね」
 本当にゴールドを使っていたら、とんでもない金額になる。

「内装とかでも見るようになったぞ。ゴールドのモールとか棚枠とかな」
 日本人なら、仏壇の金細工に馴染みがある。

「ああいうので金運アップって、あながち馬鹿にできないと思うんだよね」
 身に付けると確かに気分は上がる。明るく輝くモノに、生物は吸い寄せられる習性がある。
「金のシャチホコとかネ!」
 名古屋人は堅実だが、使う時は使う。金鯱は中部圏の好調さを象徴している。

「メシヤさま、咳をされていますね」
 レマが心配そうに見つめる。

「うん。昔からちょっとぜんそく気味なんだよね」
 メシヤはそのせいもあってか、匂いや空気の流れに敏感である。

「可哀想だけど、この時期にはなんともタイミングが悪いわね」
 プロミネンス禍はいまだ収まらない。

「お兄ちゃん、これ食べる?」
 マナが冷蔵庫から旬の金柑を取り出した。

「おっ、気が利くねえ」
 メシヤはざっと洗い流してヘタを取り除くと、皮ごと口にほうり込んだ。

「うわっ、あんたよく皮なり食べれるわね!」
 メシヤは基本的にフルーツを丸ごと食べる。

「マリアさん、金柑は皮にヘスペリジンなど多くの栄養素が含まれていて、血流の改善や疲労回復など様々な健康効果があるんです。咳止めや風邪予防にも効くんですよ」
 マナがにこやかに食効を解説した。

「ふむ。金柑はシロップ漬けや蜂蜜漬けにして食べることが多いが、それだと糖分も摂り過ぎてしまうからな。メシヤみたいにそのまま食べるのが“薬”としては適切だろう。
 そう言いつつ、イエスも金柑をひょいひょいと摘まむ。

「自然ってちゃんと出来てるわよね。こういう風邪をひきやすい時期には、ちゃんとそれに効く食べ物が実るようになってるんだから」
 夏場はほてった体を落ち着かせる、スイカやトマトが育つ。

 目下、世間を震撼させているプロミネンスウイルス。もし金柑が少しでも症状を和らげるのだとしたら、天の配剤と言わざるを得ない。プロミネンスをcorona(冠)と呼称する別世界もあるようだが、キンカンに金冠という字を当てられることもあるのだ。







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