第154話 2つの月曜日の思い出

文字数 1,353文字

「メシヤ!」
 マリアが興奮した顔で走り寄ってきた。

「おはよう、マリア。慌ててるね」
 いたって冷静なメシヤ。

「これ、見なさいよ」
 マリアがローズゴールドのiPhoneを近づけた。

《売り切れ続出、大人気ステーキサンド!》

「あ」
 メシヤから間抜けな声が漏れた。

「ほら、ここもあそこも、つぶやきが増えてるわ」
 以前、メシヤがステーキサンドを作ったことがあるが、マリア達には内緒でネットに紹介していたのである。

「確かにあのとき、僕はステーキサンドを作ったけど、調べたら結構前からあったみたいだよ」
 メシヤの言うとおり、最初に考案したのがメシヤという訳では無かった。

「そうなんだろうけど、これはバズってると言っても大袈裟じゃないくらいだわ」

「マリアさま、なんだか興奮していらっしゃいますね」
 裁紅谷姉妹が到着した。

「ワ~、ステーキサンドカ~!」
 あの試作の時に、残念ながらエリたちはいなかった。

 レマが素早く検索している。
「人気サンドイッチランキングですと、1位がタマゴサンドで、まだステーキサンドの名前は見当たりませんね」
 集計の古いデータなのだろう。

「え! なにかの間違いよ!」
「マリアさま、ですが・・・」

「なんでタマゴサンドが1位なのよ!」
 沸点のポイントがずれていた。

「2位がハムサンド 3位がツナサンド、か」
 メシヤが考え始めた。

「ハムサンドが1位に決まってるじゃないの!」
 朝から血圧の高いマリア。

「ああ、やっぱりね」
 レマのスマホをのぞき込んだメシヤ。

「これ、一応アンケートを取ったって体の、どこの団体かもいまいち分からないサイトのやつでしょ?」
「はい、そうですわ」

「コトの真偽は置いておいて、こういうのって結果に偏りが出るし、悪いことを企んでる書き手がいたとしたら、自分に都合のいい順位にしてることも考えられる」

「うン。そういう時ハ、売り上げデータが客観的だネ」
 エリも調べだしたが、なかなか目的の記事がヒットしない。知られると困るのだろうか、とは考えすぎか。

「4年前のファミマの記事が出て来ましたわ。1位はミックスサンド。2位がジューシーハムサンド。3位がハムチーズたまごサンド、ですわね」

「あ~、ミックスサンドが1位ね。それは分かるわ。ひとつ買うだけで済むもの」
 少量多品種がいまのトレンドだ。

「ミックスを除けばハムが1位。良かったネ、マリア!」
 エリはハムを食べられないが、マリアの肩を持った。

「たまごも人気だと思うんだけどさ、ゆで卵派と卵焼き派とがいるよね」
 どうやらゆで卵派の人気が高いようだ。

「その2つならあたしは卵焼き派なんだけど、甘いのは苦手ね」
 塩やダシを利かせたものが、マリアの好みであった。

「うん、僕もマリアと同じ。それとさ、スクランブルエッグのタマゴサンドが無いよね。こぼれるからかなあ?」
 初めて作った料理(?)がスクランブルエッグの人も多いだろう。

「ロールパンでならよく見ますわ」
 裁紅谷姉妹の食卓にも並ぶ。

「メシヤ。ポケット状にしたサンドイッチなラ、スクランブルエッグがあるみたいだヨ!」
 エリには独自の検索ツールがある。

「さっそく僕もやってみよう!」
「これもすぐコンビニに登場しそうね」

 朝練を終え、イエスが遅れてやって来た。
「聞かせてもらったぞ。焼き肉サンドも頼む!」






ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み