第30話 サッカー講座
文字数 925文字
さて、北伊勢高校サッカー部の練習風景に戻るとしよう。
「サッカーは手を使わない格闘技って言いますけど、手の使い方がすごく重要なんですよ」
「また、メシヤ理論か?」
先輩たちはメシヤの蘊蓄に辟易することもあるが、中には聞き逃すことのできない技術論もあったりするので、次第に耳を傾けるようになっていた。
「ほう、どういうことだ。メシヤ」
「サッカーをする者なら自然とやっていることですけど、蹴り足とは逆の手を大きく広げますよね。ロングキックほど手の動きが大きいはずです。」
「なんだ、そんなことかよ。言われなくても知ってるよ」
「ところが、この逆手の角度や力のいれ具合でボールのニュアンスが全く変わるんです。それと、右足と左足のキックは左右対称にはなりません。フォームが、手の動きが異なります」
「言われてみればそうだな」
「あと、トップスピードから減速する時は両手を後ろに広げるとブレーキのききがよくなります。ドラッグレースのパラシュートみたいなものですね。次の動作へも移りやすくなります」
立て板の水のごとく持論を述べるメシヤ。
「それから・・・」
「まだあるのか(笑)」
「速く走る方法です」
「なに!」
「それは誰もが知りたいだろう!」
メシヤの発言にみんな色めき立った。
「簡単ですよ。両腕を左右に広げて走るんですよ」
「はあ?」
「おいおい」
「そんな恥ずかしい真似できるか!」
先輩部員たちの期待がいっぺんに失望へと変わった。
「なんば走りというのがブームになったことがありますが、あれは同じ側の手と足を同時に出すという動きでした。要はねじれをなくすということです」
「ああ、確かそんな話だったな。だが、あれはやはり走りにくい」
「そうですね。僕も不自然な動きだと思います。ですが両腕を広げるとねじれはなくなりますし、脚がものすごく速く動きます。車輪のように回転している感覚です」
「そこまで言うならメシヤ、ちょっとゴールラインの端から反対側に向かって走ってみろ」
おとなしく聞いていた大空キャプテンが口を開いた。
「俺がロングボールを蹴ってやるからそれを追いかけろ」
そう言うと大空は部員たちを見渡した。
「そうだな。おい、桐嶋」
「はい」
「メシヤと勝負してやってくれ」
「分かりました」
「サッカーは手を使わない格闘技って言いますけど、手の使い方がすごく重要なんですよ」
「また、メシヤ理論か?」
先輩たちはメシヤの蘊蓄に辟易することもあるが、中には聞き逃すことのできない技術論もあったりするので、次第に耳を傾けるようになっていた。
「ほう、どういうことだ。メシヤ」
「サッカーをする者なら自然とやっていることですけど、蹴り足とは逆の手を大きく広げますよね。ロングキックほど手の動きが大きいはずです。」
「なんだ、そんなことかよ。言われなくても知ってるよ」
「ところが、この逆手の角度や力のいれ具合でボールのニュアンスが全く変わるんです。それと、右足と左足のキックは左右対称にはなりません。フォームが、手の動きが異なります」
「言われてみればそうだな」
「あと、トップスピードから減速する時は両手を後ろに広げるとブレーキのききがよくなります。ドラッグレースのパラシュートみたいなものですね。次の動作へも移りやすくなります」
立て板の水のごとく持論を述べるメシヤ。
「それから・・・」
「まだあるのか(笑)」
「速く走る方法です」
「なに!」
「それは誰もが知りたいだろう!」
メシヤの発言にみんな色めき立った。
「簡単ですよ。両腕を左右に広げて走るんですよ」
「はあ?」
「おいおい」
「そんな恥ずかしい真似できるか!」
先輩部員たちの期待がいっぺんに失望へと変わった。
「なんば走りというのがブームになったことがありますが、あれは同じ側の手と足を同時に出すという動きでした。要はねじれをなくすということです」
「ああ、確かそんな話だったな。だが、あれはやはり走りにくい」
「そうですね。僕も不自然な動きだと思います。ですが両腕を広げるとねじれはなくなりますし、脚がものすごく速く動きます。車輪のように回転している感覚です」
「そこまで言うならメシヤ、ちょっとゴールラインの端から反対側に向かって走ってみろ」
おとなしく聞いていた大空キャプテンが口を開いた。
「俺がロングボールを蹴ってやるからそれを追いかけろ」
そう言うと大空は部員たちを見渡した。
「そうだな。おい、桐嶋」
「はい」
「メシヤと勝負してやってくれ」
「分かりました」